抄録
舌に化膿性炎症を生じることは少なく,膿瘍を形成することは稀である。
我々は舌痛と構音嚥下障害,呼吸困難を主訴に来院した14歳女児の舌膿瘍症例を経験した。視触診のみでは診断は困難であったが,造影 CT 検査により舌膿瘍の診断に至り,抗菌薬点滴によって穿刺,切開を行わずに改善した。
1980年以降の舌膿瘍本邦報告例を検討した。舌体部に多く,特発性が大半であった。多くが穿刺,切開により確定診断に至っているが,本例では造影 CT 検査が非侵襲的な診断法として有用であった。膿瘍治療の原則は穿刺,切開であるが,本例を含め抗菌薬で改善する例も数例認められた。明らかな気道閉塞,異物がなく,初回の穿刺切開が困難な例では厳重な監視下に抗菌薬単独で経過を見ることも可能と思われる。しかし数日で改善しない場合には躊躇せず穿刺,切開に踏み切るべきと考えられた。