小児耳鼻咽喉科
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原著
プロプラノロールが奏効した頸部血管腫の乳児例
金子 由佳有本 友季子仲野 敦子工藤 典代
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2015 年 36 巻 1 号 p. 52-57

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抄録

  乳児血管腫は乳幼児の 1%に発生する,最も頻度が高い腫瘍である。90%以上が 5–7 歳までに自然消褪するが,血管腫の大きさ・存在部位により患児の生命が危険な状態に曝される場合や,Kasabach-Merritt 症候群を合併し,血小板減少・線溶系亢進・凝固異常をきたす場合は早期の治療開始が望まれる。従来の乳児血管腫に対する治療法はいずれも一長一短あるが,近年では非選択的 β 阻害薬であるプロプラノロールが有効との報告例が急増している。当院でも巨大な頸部血管腫の乳児に対してプロプラノロールの内服投与が著効した症例を経験した。症例は出生後より左頸部の腫脹を指摘されていたが,徐々に増大。頸部皮下から喉頭蓋にかけての腫脹をきたしたため,プロプラノロールの内服投与を開始したところ,投与開始後数日で腫瘍の縮小を認めた。その後も腫瘍の著明な縮小を認め,治療開始後 6 カ月で内服を終了したが,1 年経過し再発所見は認めていない。

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© 2015 日本小児耳鼻咽喉科学会
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