小児耳鼻咽喉科
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シンポジウム 2―小児耳鼻咽喉科領域における遺伝子医療
小児耳鼻咽喉科領域の遺伝性疾患“ムコ多糖症”の診断・治療に関する最近の進歩
小須賀 基通
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2015 年 36 巻 3 号 p. 282-285

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抄録

 ムコ多糖症は,ライソゾーム酵素の欠損により,ムコ多糖が細胞内に蓄積する先天代謝異常症である。ムコ多糖症は,遺伝性疾患であり 7 型に分類されている。Ⅰ・Ⅱ型は特異顔貌,関節拘縮,肝脾腫,心弁膜症,難聴,精神運動発達遅滞,Ⅲ型は重度の進行性精神発達遅滞,Ⅳ型は重度の進行性骨変形を主症状として呈する。Ⅵ型はⅠ型に類似するが,精神発達遅滞を認めない。診断は,尿中ムコ多糖分析と白血球中ライソソーム酵素活性測定によってなされる。根治的治療法は,造血細胞移植と酵素補充療法がある。共に,尿中ムコ多糖排泄の正常化,肝脾腫や関節拘縮の改善,粘膜肥厚・気道感染や伝導性難聴の改善などを認めるが,角膜・骨・中枢神経への治療効果は芳しくない。また造血幹細胞移植には安全性やドナー不足,酵素補充療法には週 1 回の投与が生涯必要であること,医療費が莫大であることなど改善すべき点がある。

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© 2015 日本小児耳鼻咽喉科学会
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