2016 年 37 巻 1 号 p. 11-19
当院では2013年 2 月より難治性滲出性中耳炎または鼓膜アテレクターシスに対し鼓膜輪下より鼓室内に T-tube を留置する subannular tube(SAT)法をおこなってきた。SAT 法を選択した症例は 4 症例 7 耳であり,SAT 法を施行した際の年齢の平均値は7.2(中央値 8)歳,男児 2 例,女児 2 例であった。SAT までの病悩期間は平均56.7(中央値:57)カ月であり,この間に平均2.0回の経鼓膜チューブの挿入術がなされていた。SAT 挿入後気導聴力は平均22.7 dB 改善した。SAT 後チューブが自然脱落した耳は 3 耳であり 1 耳で鼓膜穿孔の自然閉鎖を認めているが,すべての耳で滲出性中耳炎や鼓膜アテレクターシスの再発なく経過している。SAT 法はこれまで対応に苦慮してきた難治性滲出性中耳炎や鼓膜アテレクターシスに対する一選択肢となると考えられる。