ダウン症は高率に感音難聴を合併し,CT にて内耳奇形を高率に合併することが報告されている。今回,ダウン症児33例62耳とコントロール群26例50耳を対象とし,左右別の聴力評価を行った。全例に側頭骨 CT を施行し,計27項目の内耳構造の計測を行った。ダウン症では13耳(21.0%)に高度以上の感音難聴を認めた。
27項目の中でコントロール群の測定値−2SD を下回った割合が最も多かったのは外側半規管側骨島径で52耳(83.9%)であった。
上半規管骨径,後半規管骨径,蝸牛長径,蝸牛の高さ,前庭長径,内耳道幅径においてダウン症児では有意に小さかった。各半規管腔径,蝸牛回転短径,前庭短径,内耳道長径には有意差を認めなかった。蝸牛神経管径,内耳道幅径と感音難聴は有意に関連していた。今回,ダウン症の内耳構造は61/62耳(98.4%)と高率に異常を認め,高度~重度難聴耳すべてに存在した。これは先天性難聴児の奇形率よりはるかに多い。
今回,高度~重度感音難聴に関与する項目は蝸牛神経管径と内耳道幅径であり,ダウン症の難聴の原因として考えられた。
抄録全体を表示