2016 年 37 巻 3 号 p. 263-267
福祉施設において言語聴覚士が行う小児の摂食嚥下リハビリテーションでは,食事場面は専門的かつ包括的な発達支援として行われる。食事指導を行う時期は,障害児を育てる親の育児困難感,障害の特性による育児そのものの特殊性(発達の見通しが持ちにくい,障害自体の理解困難)があること,さらに幼児期は前言語期のコミュニケーション構築に重要な時期であることから,個別の支援が必要になる。そのような考えに基づき,9年間で2回以上,最長4年間にわたる指導を行った18例を対象としたので,その経過を報告した。症候群により特徴的な経過が見られ,継続的な支援により問題点も変化していくことを示した。支援において重要なことは,情緒交流(愛情交換)の場面としての食事を専門的見地から助言・実践すること,そして親の,親としての発達を支えることである。支援の核心は,継続的かつ可能な限り長期的に関わっていくという関係性のなかにあると考えられた。