2021 年 42 巻 1 号 p. 61-65
一側性難聴児は対側が正常聴力であれば,乳幼児期の言語獲得や日常生活において支障はないと考えられてきた。しかし,両耳聴ができないために,騒音下での聞き取りが困難,難聴側からの聞き取りが困難,音源定位が困難である。特に学童期になると,集団学習の場である学校の教室は暗騒音や他の児の声などの騒音があることから,一側性難聴児にとって教室は教師の声が聞き取りにくい環境であると考えられる。これまで本邦では,一側性難聴児の座席配置を教室の前方で聞こえる方の耳を教師に向ける席が望ましいと指導する程度で,それで十分な聞き取りができるかの検討は行われてこなかった。我々は,一側性難聴児の騒音下での語音聴取能を評価し,学校での聴覚補償として,一側性難聴児の補聴援助システムの使用とその購入費助成制度について報告した。