2022 年 43 巻 1 号 p. 29-34
頭頸部リンパ管腫や,リンパ管腫症,ゴーハム病の多くは,難治性かつ致死的であり,難治性リンパ管疾患とされているが,現時点では本疾患に対する薬物療法はコンセンサスが得られているものはなく,承認されている薬剤もない。近年,mTOR阻害剤であるシロリムスがこれらの疾患の病状を高い確率で抑えることが国内外で報告されている。我々は2016年に日本医療研究開発機構より研究を獲得し,リンパ管疾患(リンパ管腫,リンパ管腫症,ゴーハム病)に対するシロリムス錠の医師主導治験を実施したところ,高い有効性を認めた。さらに2020年より,小児用製剤である顆粒剤を加え,その他の難治性脈管異常に対する治験も開始し,世界初の薬事承認を目指している。本稿ではリンパ管疾患に対する有効性,安全性のまとめと実際の治療,および今後の展望について解説する。