鼓膜再生療法は,2019年11月に健康保険適用となった。鼓膜再生療法は,従来の再建医学とは全く異なる再生医学の概念を基盤にした新しい治療法である。皮膚切開や自己組織の採取は不要で,それに伴う後遺症などはない。自己修復能を最大限に高め正常鼓膜の再生を促進する治療である。小児例でも95%という高い鼓膜再生率が得られたが,成人例と比較して2回までの再生率はやや低く,再穿孔率はやや高かった。これには耳管機能の問題や禁止事項を守れないことなどが影響していると思われる。一方,先天性真珠腫症例など鼓膜穿孔がない症例に対する応用は,全例で成功し極めて有効である。
小児例への応用は,年齢,乳突蜂巣の発育度合,耳管機能の検討,アレルギー性鼻炎など個々の症例に応じ慎重に対処する必要があるが,将来の長い小児に対する低侵襲・短時間で正常鼓膜の再生や気骨導差の極めて少ない聴力改善が期待できる鼓膜再生療法は有効な治療法と考えられる。