2022 年 43 巻 3 号 p. 305-312
小児人工内耳手術は低年齢化が進んでおり,本邦の人工内耳報告書の集計結果からも適応年齢の低下が確認できている。一方で,4歳以上で人工内耳手術が行われていた症例も一定割合存在するが,早期に手術を行わなかった経緯は定かではない。今回我々は,当院で2000年から2019年にかけて人工内耳手術を施行した4歳以上の小児例について手術に至る経緯を検討した。手術までの経緯は,「より若年で適応と考えられた症例」,「適応判断が困難であった症例」,「病因による症例」に分類でき,直近10年とそれ以前を比較しても「病因による症例」の割合はほぼ変化はなく,「適応判断が困難であった症例」の割合が減少傾向であり,「より若年で適応と考えられた症例」の割合についてはむしろ増加傾向にあることが分かった。早期人工内耳を進めるにあたり難聴診断およびその後の人工内耳適応判断に関わる啓発を今後も積極的に行う必要性があると考えられた。