移行期医療支援は,小児から大人への移行期の医療を円滑に継続するための支援である.その基本は,患者の自律(自立)支援と医療体制整備である.医療の発展により慢性疾患を持ちながら成人する小児が増えてきたことなどから,本支援の必要性が高まってきた.耳鼻咽喉科では,成人後も小児期と同じ施設で診療を継続することが多いが,それでも保護・代諾的な医療から自律性を尊重した医療への移行を支援する必要がある.移行期医療支援の内容は,患者への説明,外来の予約,本人の状況の把握,支援計画の検討,心理および発達評価,移行の進捗チェック,社会制度利用の諸手続の案内,薬剤管理の説明,移行先施設の調整などがある.支援が難しい例としては,知的発達の遅れを伴う場合,複数の異なる医療上の問題を持つ場合などがある.成人後の良質な診療を長期継続するために,本邦の耳鼻咽喉科診療における移行期医療支援の普及が望まれる.