小児耳鼻咽喉科
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ランチョンセミナー2
アレルギー性鼻炎における移行期医療
川島 佳代子
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2025 年 46 巻 2 号 p. 59-63

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Abstract

移行期医療(transitional care)は,小児期から成人期への医療移行を円滑に行い,患者が継続的に適切な医療を受けられるよう支援する枠組みである.近年の医学の進歩により小児期発症の慢性疾患患者の生存率が向上し,成人医療への移行が重要な課題となっている.アレルギー疾患においても,喘息・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎は小児発症が多く,思春期・青年期を経て成人まで持ち越す例が少なくない.移行期には生活環境の変化や保護者依存からの自立過程に伴い,治療の中断やアドヒアランス低下が問題となる.特に喘息では小児期の重症度が成人期の転帰を規定し,食物アレルギーでは成人診療体制の不備が課題である.アレルギー性鼻炎では舌下免疫療法など長期治療継続に本人の主体的関与が不可欠である.今後は,小児科と成人診療科,耳鼻咽喉科の連携を強化し,患者のヘルスリテラシー育成と自立支援を重視した体制整備が求められる.

移行期医療について

移行期医療(transitional care or transition of care)とは,小児期から成人期への医療移行において,患者が適切かつ継続的に医療を受けられるように支援する医療体制・プロセスであり,おおむね12~18歳頃から若年成人(20歳代前半)が対象となることが多い.移行期医療が注目されるようになった背景には,医学の進歩により生存率が向上し,小児期に致死的であった疾患に罹患した小児が成人期まで生存可能になったことがあげられる.重症,あるいは慢性疾患を有する小児は海外ではchildren with special health care needs(以下,CSHCN)と総称され,その定義は,「慢性的に身体的,発達的,行動的,感情的にリスク状態にあり,一般の小児に比べ,医療サービスをより多く必要とする者」とされている1).CSHCNは原疾患や合併症の病態生理が年齢とともに変化し,さらに,新たな合併症を発症したり,成人の病態が加わる変化がみられるが,このような患者に対して十分で適切な医療支援ができていないことが問題とされている.2002年,米国小児科学会・米国家庭医療学会・米国内科学会・米国内科専門医学会は,CSHCNのトランジション(移行)に関する合同声明を発表し,CSHCNに関わる全ての医師に対し,トランジションの必要性を理解し,そのプロセスを促進するための知識と技術を身につけるよう促した2).日本においては,医療制度上15歳以降,成人医療へ移行するが,1990年前後より小児総合医療施設において小児科の対象年齢を超えて診療が行われていることが報告されており3),Reissら4)は,トランジションにおける医療システムとして,下記の4つのパターンを提示している.すなわち,①完全に成人診療科に移行する ②小児科と成人診療科の両方にかかる ③小児科に継続して受診する ④どこにも定期的に受診しない である.2014年に小児慢性特定疾病制度が改正され,同年日本小児科学会から,「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」5)が出されている.これにより,対象年齢を超えて診療されてきた従来「キャリーオーバー」と呼ばれてきた患者は,「移行期にある患者(移行期患者)」と呼ぶこととなった.2023年には,日本小児科学会が,「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」6)を発表し,「成人移行支援」を推進するために,基本姿勢:4項目,生涯を見据えた包括的支援:6項目,転科支援:6項目,体制整備及びそのほかの必要な対応:4項目の合計20項目の提言をまとめた.小児期発症の疾患を熟知している小児科医と,成人に起こる病態を専門としている成人診療科医師とのシームレスでスムーズな移行を目指す上で重要な項目であり,成人移行支援の概念も図として示されている(図1).すなわち,目標の一つ目として,小児から成人への成長に合わせた自律,自立支援を行い,自己管理,自己決定できるよう,ヘルスリテラシーと呼ばれる,健康や医療に関する情報を入手,理解,評価,活用する能力を養えるように支援すること,二つ目には,診療スタイルも家族中心というスタイルから,患者中心に移行すること,三つ目には,小児診療科から患者に適した診療科へ移行することをめざしている.

図1 成人移行支援の概念図(日本小児科学会より転載許諾を得て掲載)

トランジション(移行)は「小児期発症の慢性疾患を持つ患者が小児を対象としたヘルスケアから成人を対象とするヘルスケアへ切れ目なく移る計画的,継続的,包括的な患者中心のプロセス」を意味し,3本の横矢印で示した①自律・自立,②診療スタイルの移行,③診療体制の移行が柱となる.成人移行支援はトランジションのための支援で,適切で必要な医療を切れ目なく提供することやその人らしい生活を送れることを目的とし,自律・自立支援,転科支援や併診などによる診療体制の整備が含まれる.自律・自立支援には,自己管理・自己決定・ヘルスリテラシー獲得のための支援や,就学・就労支援が含まれる.(日本小児科学会雑誌 2023; 127(11) 1478.より転載)

アレルギー疾患における移行期医療

食物アレルギーや気管支喘息などのアレルギー疾患は慢性疾患であり,小児期に発症することが多く,小児から成人に至るまで治療を継続する場合が多い.アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを幼児期に発症し,学童期以降に気管支喘息やアレルギー性鼻炎が顕在化する「アレルギーマーチ」は広く知られているが,思春期から青年期にかけては,複数のアレルギー疾患が併存することがあり,それぞれの対応が必要である.移行期共通の課題は,小学校から中学,高校と患者の生活環境が急変するため,管理の切れ目が生じやすく治療が途切れることがあることや,保護者中心に進められていた治療から思春期に突入し,保護者の指示に反抗しがちとなることであるが,慢性疾患であるアレルギー疾患においてもこのことが治療継続を困難にしている.

これらのことから,いかに環境の変化があってもアドヒアランスを低下させないようにできるかが重要で,治療の必要性を自ら理解し,自己で治療方針を決定するような患者主体の治療への転換をスムーズに促すことが重要である.

気管支喘息は,足立らにおける厚生労働省の調査7)によると,全年齢での気管支喘息の有病率は14.7%で,過去の調査との比較による経年推移では,気管支喘息は2002年をピークに減少傾向とされる.小児気管支喘息の重症例については,救急受診・入院例は減少傾向であるが,喘息重症度分布経年推移に関する多施設検討では,現在の治療を加味した真の重症度で,13–15歳で重症持続型以上の割合は変わらず高く35.2%だったと報告されている8).小児期喘息の寛解(remission)については思春期~若年成人までに寛解するのは約2~5割とされており9,10),成人に持ち越す例も多く,移行期における治療が重要であると考えられる.小児喘息の転帰を50歳まで観察した研究では,成人期の臨床的および肺機能の結果は,小児期の喘息の重症度によって強く決定され,成人に見られる肺機能の低下は小児期に確立されるとしており,小児期の治療は非常に重要である.喘息における移行期医療の重要性は,小児気管支喘息治療・管理ガイドライン202311)でも記載されている.すなわち,小児気管支喘息治療・管理ガイドラインから,成人喘息のガイドラインである喘息予防・管理ガイドライン202412)へと一貫性のある管理・治療ができるスムーズな移行ができるよう連続性を意識して示されている.

食物アレルギーの有症率は,乳幼児期が最も高く,加齢と共に漸減する13).乳幼児期に発症する鶏卵・牛乳・小麦などの多くは思春期までに自然寛解が認められるが,クルミとカシューナッツの木の実類や,遅れて発症する甲殻類,果物などは自然寛解しにくい14).思春期まで持ち越した食物アレルギーではアナフィラキシーを経験した重症例も多く,さらに思春期で新たな食物でのアレルギーの発症や,花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)の合併などもみられる.小児期においては,保護者が学校給食などでの食物除去について,注意しているが,思春期以降については,患者個人が食物アレルギーや食材に関する情報を適切に入手し,適切に理解し活用する力,いわゆる「ヘルスリテラシー」を養成することが必須である.食物アレルギーの移行の大きな問題は,成人の食物アレルギーを診療している医療機関が少ないことであり,重症例でアドレナリン自己注射薬の携帯が必要な患者の成人診療科での受け入れは十分ではなく,課題が多い.その他アトピー性皮膚炎でも移行期についてはガイドラインで問題点が記載されている.

アレルギー性鼻炎における移行期医療

アレルギー性鼻炎は,耳鼻咽喉科とその家族を中心とした有病率調査15,16)においても,有病率の増加が示されており,特に小児ではスギ花粉症が増加し,低年齢化している.アレルギー性鼻炎単独で発症している患児は,耳鼻咽喉科単独の受診でトランスファー(転科)の問題が生じないこともあるが,多くの小児は,アレルギー性鼻炎をはじめとする他のアレルギー疾患も併せて小児科で診療を受けているため,小児科と耳鼻咽喉科の連携が求められる.当センターでは,アレルギー性鼻炎の診療において,小児科と耳鼻咽喉科でスムーズに行えるよう取り組んでいる.すなわち,小児科で標準的治療を行なっても十分なコントロールが得られない症例は耳鼻咽喉科へ紹介とし,投薬変更,舌下免疫療法の導入,手術などの治療選択肢を検討することとしている.同様に小児科は他の成人診療科と移行期について無理ない移行ができるよう検討し,実践している(図2).保護者の小児科医への信頼関係は厚く,移行した後も小児科医と保護者,患者本人を交えた治療方針の決定を必要とすることもある.

図2 大阪はびきの医療センターにおけるアレルギー移行連携

当センターにおけるアレルギー疾患の移行期医療については,小児科を中心として,各診療科と緊密な連携を行うことでスムーズな移行をめざしている.アレルギー性鼻炎については,保存的治療に抵抗する患者や,舌下免疫療法を検討する患者,手術を検討する患者などを主に紹介対象としている.

小児のアレルギー性鼻炎は発症のタイミングがわかりにくく,早めに治療介入することが重要であると言われている.日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会,日本小児耳鼻咽喉科学会,日本鼻科学会で小児科医とともに作成した小児アレルギー性鼻炎診療の手引き17)は,小児アレルギー性鼻炎を疑う仕草や鼻内所見も掲載されている.また小児では年齢により使用できる薬剤が異なるため,手引きでは6歳以下,7歳以上12歳未満,12歳以上15歳未満に分けて治療法が推奨されている

アレルギー性鼻炎の治療は継続的に行なう必要があるが,最も継続を求められるのは,アレルゲン免疫療法であり,現在は舌下免疫療法が小児においても多くの患者に行なわれている.5歳児ぐらいの低年齢から開始するケースも多く,保護者が導入の決定から,副反応の出現の対応,アドヒアランスについても管理していることが多い.著者が小児で舌下免疫療法を開始した保護者に対して行なったアンケートでは18),舌下免疫療法を始める前の懸念事項として最も多かったのが“毎日服用できるか”であり,次いで“長期間継続できるか”であった.保護者が継続について不安を感じながら開始したことがうかがわれた.舌下免疫療法は3年から5年の継続が望ましいとされており,継続している間に幼児は小学生となり,小学生は中学生と生活環境が大きく変わる.学校の授業時間,課外活動,塾や習い事などとの両立ができず,受診の時間が取れなくなること,今まで従っていた保護者からの服用指示に反抗し,アドヒアランスが不良になることはよく経験することである.医療者としては,小児に対し,理解力の発達がめざましい小学校低学年から,保護者だけでなく本人にも,疾患の理解や自己管理を行えるよう促し,積極的な治療へ関わり,患者主体の治療へと,スムーズに自立できるよう,できれば多職種で支援を行なうことを意識すべきである.

終わりに

アレルギー疾患の罹患は長期にわたり,継続的な治療を行なうことがQOL低下や仕事,勉学への影響をもたらすことを防ぐことになる.

思春期特有の特徴を理解し,前思春期から保護者だけでなく,患者本人も交えた患者教育や自らの治療方針を自主的に行えるよう,医師だけでなく,多職種での関わりも重要である.

謝辞

発表および論文作成についてご助言をいただきました大阪はびきの医療センター 小児科 亀田誠主任部長に深謝いたします.

本論文の要旨は第20回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会(倉敷)にて発表した.

利益相反に該当する事項:なし

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