小児耳鼻咽喉科
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小児急性中耳炎に対する鼓膜切開術の現況とその有効性について
宇野 芳史
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2008 年 29 巻 3 号 p. 66-72

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抄録
小児急性中耳炎に対し「小児急性中耳炎診療ガイドライン」に従い治療を行った当院での鼓膜切開術の現況とその有効性について検討を行い以下の結果を得た.
1)鼓膜切開術の施行頻度は,急性中耳炎の重症度が進むに従って高くなっており,特に重症例では,8割近くの症例で鼓膜切開術を施行していた.また,スコア別では,重症度スコア19点以上あるいは臨床症状スコア8点の症例では全例で,鼓膜所見スコア10点以上の症例では8割以上の症例で鼓膜切開術を施行していた.
2)鼓膜切開術の有効性については,重症度スコアが重症例,臨床症状では,耳痛スコア2点,発熱スコア1点,2点の症例,鼓膜所見では,鼓膜の発赤スコア2点,鼓膜の膨隆スコア4点,8点,耳漏スコア0点の症例で,鼓膜切開術を施行した症例の方が,鼓膜切開術を施行しなかった症例と比較し有意差をもって早期に改善を認めた.
3)全体的な改善率は,観察期間10日までの早期においては鼓膜切開術を施行した症例の方が,鼓膜切開術を施行しなかった症例よりも有意差をもって改善率が高かった.しかし,最終成績においては,鼓膜切開術を施行した症例と鼓膜切開術を施行しなかった症例の間で有意差は認められなかった.
4)再燃・再発した症例は,重症度が中等症例では鼓膜切開術を施行した症例と鼓膜切開術を施行しなかった症例の間で各々約10%と有意差は認められなかった.しかし,重症例では鼓膜切開術を施行した症例では約10%,鼓膜切開術を施行しなかった症例では約38%と有意差をもって鼓膜切開術を施行した症例の方が再燃・再発率が低かった.
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© 日本小児耳鼻咽喉科学会
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