2020 年 40 巻 p. 47-51
生涯発達において、各時期は、それぞれその時期として特徴的な姿をもち、課題を持つ。人はそれぞれの時期において後々まで心のなかに貯蔵される体験に出会う。幼児期は、「意志するかかわりあい」「想像するかかわりあい」の体験に出会う時期である。自分が遭遇する出来事をどう意味づけるか、さらには世界や人間、そして自己そのものをどういうものとして意味づけるかは、その人間が幼児期から老年期に至るまでのそれぞれの時期を生きていく上での中心的拠りどころとなるが、幼児期はまさにその基礎となる時期である。幼稚園教育要領に示される「10の姿」は、幼稚園教育において育みたい資質・能力を踏まえつつ、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を整理したものであるというが、生涯発達過程 における幼児期の位置づけからすれば、小学校教育の先取りになってしまっているとも考えられる。