抄録
本稿では、保育所を運営する社会福祉法人の財務的特徴を把握するため、東北地方で一園のみ保育所
を営む社会福祉法人6法人5期の財務諸表を取り上げ、事業活動を表す資金収支計算書を基に基礎的財
務分析及び損益分岐点分析を行った。その結果、事業収入のうちおよそ7割が人件費に充てられており、
固定費が大きい業界であることが確認された。次に、損益分岐点分析を勘定科目法により実施したとこ
ろ、限界利益率は83%、事務費の一部を変動費に振り分けた場合で77%となった。損益分岐点売上高
は1億815万円で、事務費の一部を変動費に振り分けても1億710万円という結果となった。固定費で
ある人件費が大きいことから、需要の変動に対応しづらい業界体質であり、経営的にはパート・アルバ
イトの採用を増やし変動費化させることも戦略の一つではあるが、そのような戦略では長期的な人材の
質が保てず、保育所の特色が打ち出せなくなると指摘した。そして、さらなる少子化が目前に迫る時代
だからこそ、人件費が大きいことを逆手に取り、保育所の特色を打ち出せる特徴ある人材の確保が、園
の人材戦略になり得ると指摘した。本稿はごく狭い範囲の分析にとどまっているため、今後は、大規模
園との比較や、法人全体としての決算の特徴、他県との比較など多様な分析により保育所の財務的特徴
を明らかにし、少子化に備えるための戦略の構築を考えていきたい。