修紅短期大学紀要
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地域共生社会の実現に向けた新しい農福連携のあり方について
館山 壮一
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2022 年 43 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

 本稿では、近年提唱された地域共生社会の実現及び持続的な推進に向けて、農福連携がどのようなあ り方を目指すことで地域共生社会の実現に寄与するか検討した。地域共生社会は近年になって政府が提 唱した地域課題解決の方針である。一方、農福連携は農業分野での障害者雇用に端を発した画期的な取 組であり、実践や研究が盛んにおこなわれている概念である。本稿では地域共生社会に関する政府の方 針を明らかにしつつ近年の研究動向を捉え、農福連携の特徴と照らし合わせ、その方向性を検討した。 その結果、地域共生社会の具体的な構築に対しては、住民主体・住民参加が求められるものの、地域住 民の自主性に任せていては困難であり、社会福祉協議会による介入や何らかの誘導によって地域を組織 化すること、地域が機能する仕組みづくりを支援すること、そしてその具体的運用方法を検討すること が必要であると明らかになった。さらに、農業と福祉について文献研究をした結果、人が生きるうえで の必須の営みが農業であり、福祉の根源に存在するものが食であって、人と農業、食、福祉は本来的に は一体であり、それゆえに、結びついている状態が本来的であると理解できた。そしてまた農業を契機 とした地域集団の結びつきが、地域に居住する弱者への救済につながり、そこに地域支援としての農福 連携の姿があると理解できた。農福連携の目指すべき姿は食を生み出す農と人、福祉が一体となること であり、そのあり方こそが、障害者就労にとどまらない、新しい農福連携の姿である。そして農福連携 と地域共生社会を一体的な存在とみなし、推進戦略を構築して運用することで地域共生社会の実現が可 能になると主張した。

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