抄録
室内空気環境の改善を図り,より健康・快適な空間とするために,空気清浄機が普及している。空気清浄機には使用に伴う性能劣化の問題があり,使用時間と劣化性との関係についての科学的資料が求められている。しかし,既往研究においては機器の初期性能を求めたものが多く,劣化性を定量的に求めたものはほとんど見当たらない。そこで,本研究では,ガス状汚染物質除去性能の劣化性を求める新型試験法を提案し,同試験法を用いてある使用期間(4ヶ月間)に伴う性能劣化性を1機種のみの対象であるが,定量的に明らかにした。試験対象物質はシックハウスの原因物質とされ,かつ建築基準法による規制物質のホルムアルデヒドとした。結果として,試験した家庭用空気清浄機のホルムアルデヒド除去性能は,使用時間の増大と共に大きく低下する。すなわち,初期性能は機器評価指標の相当換気量で表すと99.6m3/hであったが,1,2,3,4ヶ月間の使用でそれぞれ40.7m3/h(低下率:約59%),29.1m3/h(約71%),29.2m3/h(約71%),25.5m3/h(約74%)となった。特に,使用開始1ヶ月間に大きな除去性能の低下が生じた。今後の課題は,同試験法を用いて,種々の家庭用空気清浄機についての検証を行い,機器の除去性能の劣化性についての実態をより明確なものとすることにある。