室内環境
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原著論文
VOCデニューダーによる室内空気中フタル酸エステル類のガス・粒子態の分離測定に関する検討
アブラト メリキザット藤井 修二鍵 直樹
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 16 巻 1 号 p. 3-13

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抄録

フタル酸エステル(PAE)は準揮発性有機化合物(SVOC)の代表的な物質であり,蒸気圧が低いため空気中ではガス相と粒子相の両相に存在する可能性が指摘されている。そこで本研究では,室内空気中においてSVOCのガス・粒子態を分離するために,VOCデニューダーを上流に,石英ガラス繊維フィルター1枚を下流に用いたデニューダーフィルター捕集法(D-F捕集法)の適用性について検討した。まず,ガス・粒子態のVOCデニューダーの透過特性を把握するために,Gormley-Kennedy式に基づいた透過率の理論値を求めた。それを検証するために,安定した濃度のガスを発生させるDBP暴露ガスの発生方法を検討した。次に,暴露ガスと室内浮遊粉じんを用い,ガス・粒子のデニューダーへの透過率を求めた。結果としてデニューダーへの供給流量が5 L/minにおいて,ガスはほとんどデニューダーで除去され,粒径10 nm以上の粒子の透過率は88%程度の結果が得られた。また,通気流量が5 L/minにおいては,理論値と実験値がほぼ一致したため,この条件においてガス・粒子態を分離できると判断した。さらに,空気中のPAEの存在状態を知るために,実環境においてD-F捕集方法とTenax捕集管方法による並行測定を行った。その結果,空気中のガス態と粒子態を合計した平均濃度はDBP,DEHP,DEPの順になり,DBPが最も高濃度であった。また,デニューダーに捕集されたPAEの再揮発の影響は見られなかった。室温28℃以上では,PAEのガスの濃度の方が粒子態よりも高かった。

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© 2013 一般社団法人 室内環境学会
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