室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
原著論文
セミアクティブサンプラーによるVOCの捕集と物質移動過程解析
鈴木 義浩 野口 美由貴山崎 章弘中井 里史
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 25 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

パッシブサンプラー(PAS)によるサンプリング法は, 簡便で電源を必要とせず, 可搬性に優れたサンプリング法であるが, 風速などの外部条件によってサンプリングレート(SR)が変化し, 測定精度に影響を受ける。このような問題点を解決するために開発したセミアクティブサンプラー(SAS)は, 金属製の円筒中に, 拡散層と吸着層からなる円筒形のPASを挿入した構造を有する。また, SASは円筒と拡散層の間隙に, 小型ファンを用いて強制的に気流を起こさせ, 外部空気を導入する。SASへ導入された外部空気中の対象成分は, 拡散層を拡散し, 吸着層に達し, 捕集される。これにより外部の風速条件が変化しても安定な捕集が可能となる。本論文では, SAS内における物質移動過程をモデル化し, SAS内の気流速度が捕集量およびSRに及ぼす影響を定式化した。この結果, SAS内の気流が層流域にて, 捕集量, SRは共に気流流速の-1/3乗(u-1/3)および相当径(SAS内径とPAS径の差)の1/3乗(dt 1/3)となり, どちらも線形関数にて示され, トルエン, エチルベンゼン, キシレンの実測値への依存性を説明することができた。さらに, SAS外部の風速がSAS内部の気流速度に及ぼす影響を実験的に求め, SAS内部の気流速度の変化によるSRへの影響は風速4 m/s以下では, 無視できることが分かった。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 室内環境学会
次の記事
feedback
Top