室内環境
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25 巻, 1 号
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原著論文
  • 鈴木 義浩, 野口 美由貴, 山崎 章弘, 中井 里史
    2022 年25 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    パッシブサンプラー(PAS)によるサンプリング法は, 簡便で電源を必要とせず, 可搬性に優れたサンプリング法であるが, 風速などの外部条件によってサンプリングレート(SR)が変化し, 測定精度に影響を受ける。このような問題点を解決するために開発したセミアクティブサンプラー(SAS)は, 金属製の円筒中に, 拡散層と吸着層からなる円筒形のPASを挿入した構造を有する。また, SASは円筒と拡散層の間隙に, 小型ファンを用いて強制的に気流を起こさせ, 外部空気を導入する。SASへ導入された外部空気中の対象成分は, 拡散層を拡散し, 吸着層に達し, 捕集される。これにより外部の風速条件が変化しても安定な捕集が可能となる。本論文では, SAS内における物質移動過程をモデル化し, SAS内の気流速度が捕集量およびSRに及ぼす影響を定式化した。この結果, SAS内の気流が層流域にて, 捕集量, SRは共に気流流速の-1/3乗(u-1/3)および相当径(SAS内径とPAS径の差)の1/3乗(dt 1/3)となり, どちらも線形関数にて示され, トルエン, エチルベンゼン, キシレンの実測値への依存性を説明することができた。さらに, SAS外部の風速がSAS内部の気流速度に及ぼす影響を実験的に求め, SAS内部の気流速度の変化によるSRへの影響は風速4 m/s以下では, 無視できることが分かった。
  • 孫 旭, 関根 嘉香, 鈴木 路子
    2022 年25 巻1 号 p. 13-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は, 多くの人々の生活様式に変容を強いることになり, 中国東北地方の最大都市・遼寧省瀋陽市においても同様であった。本研究の目的は, 新型コロナウイルス感染症の流行により, 市民の生活習慣や環境意識がどのように変化したかを明らかにすることである。そこで, 2020年1月, 2020年7月および2021年1月に, SNSを通じて公募した瀋陽市に居住する100名に対してアンケート調査を実施した。対象者は3回の調査を通じて同一であり, 情報通信技術(ICT)リテラシーを有する50歳以上の人が主体であった。調査の結果を解析した結果, 新型コロナウイルス感染症の流行は, 市民の交通手段の選択, 調理時のマスクの着用などの生活習慣に影響した。一方, 感染症流行に伴う経済活動等の縮小によって瀋陽市の大気環境が改善され, 居住地の大気環境状況に関する不満は軽減されていた。環境汚染の原因として「環境保護への民衆の参加不足」や「環境に関する教育の不足」を指摘する人が増え, 環境保護に関する市民の意識が未だ不十分であるとの認識が浮き彫りにされた。
技術資料
  • 伊豆 美咲, 高木 滋樹, 山本 聡彦, 高見 星司, 久保 幸弘, 森永 力
    2022 年25 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    正及び負イオン(以下, 正負イオン)によるカビへの抑制効果は既に報告しているが, 今回は糸状菌に対して正負イオンがどのように作用しているか検証した。まず5種類のカビの生育に対する抑制効果を確認し, 次に生活環のどのステージで抑制するのかを確かめるため, 菌糸の生長, 胞子の発芽に与える影響を調べた。その結果, いずれのステージでも抑制することが分かった。
    また, 正負イオンを同時に放出させる装置と正イオンもしくは負イオンをそれぞれ単独で放出させる装置を用いて, 胞子の発芽抑制効果を検証した。その結果, 正イオン単独もしくは負イオン単独でもある程度抑制効果を示したが, 正負イオン同時照射の抑制効果が最も高かった。
解説
  • ―建築物環境衛生研究者からみた環境過敏症―
    林 基哉
    2022 年25 巻1 号 p. 33-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    環境過敏症の要因であると考えられる建築物の室内空気環境に注目し, 住宅の室内空気環境とシックハウス対策, 非住宅建築物における換気性能の問題, COVID-19のクラスター感染と換気不良, について述べる。日本の住宅は, 温暖蒸暑地由来の木造構法を継承し隙間が多く常時換気習慣が希薄であった。そして, 建築材料等の化学物質利用, 気密化と常時換気設備の普及の中, 多様な換気性状と室内空気環境が発生した。住宅以外の様々な用途の建築物においても, 都市化に伴う高層化や大規模化にともない, 気密化と空調設備の導入が進んだ。そして, 近年では省コスト, 省エネルギーなどによる室内空気環境の悪化が指摘されている。COVID-19クラスター感染が発生した建築物調査によって, 空調換気設備の設計施工・維持管理の不備による換気不良が, 感染拡大の要因として指摘された。このような, 日本の建築物における換気性能の実態を踏まえて, 室内空気環境が環境過敏症等の健康阻害をもたらす機序を明らかにし有効な対策を講じることが重要である。
調査資料
  • ―小児科学研究者からみた環境過敏症―
    横田 俊平, 黒岩 義之
    2022 年25 巻1 号 p. 63-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    全身的な身体症状と登校障害を主訴に受診した学童・生徒28名の臨床症状の特徴を調査した。全身の持続的な骨格筋痛, 関節痛, 種々の頭痛が全例に認められた。睡眠障害と朝の起床困難, 倦怠感・少しの動作で感じる疲労感, 食後の胃部痛・胃もたれ, 反復性の下痢と便秘, 通常の室内環境レベルでの光・音・匂いに対する感覚過敏とそれに伴う嘔気・頭痛を認めた。登校時に体調が悪化する例では眩暈, 動悸・息苦しさ, 頭痛, 腹痛等の訴えが多かった。理学的診察では全例に身体諸筋のこわばりと圧痛を認め, 線維筋痛症18圧痛点が陽性であった。血液検査では病巣を特定できる異常所見は得られなかった。これらの所見は若年性線維筋痛症に類似し, 登校障害児には若年性線維筋痛症の未診断例が含まれる可能性がある。自律神経症状, 疼痛・感覚過敏症状, 情動症状をコアとする視床下部性ストレス不耐・疲労症候群の病像が浮き彫りになり, 概日リズムの制御破綻, エネルギー代謝系の機能不全, 内的・外的環境ストレスに対する環境過敏とストレス不耐がある。線維筋痛症成人例でPositron-Emission Tomography(PET)で, 視床とその周囲にミクログリア由来の炎症が確認されており, 登校障害児においても視床-視床下部-辺縁系に病的プロセスが推察された。健常児では全く問題とならないレベルの室内環境等の身体的ストレスや心理的ストレスが登校障害児では顕著な環境過敏・ストレス不耐と易疲労性を起こし, 不登校の原因と推察された。
解説
  • ―栄養学研究者からみた環境過敏症―
    乳井 美和子, 宮田 幹夫
    2022 年25 巻1 号 p. 75-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    化学物質過敏症やシックビルディング症候群と栄養摂取状況の関連, 大気汚染や受動喫煙と栄養状態の関連など, 幅の広い環境問題と栄養の関連があるとされている。世界的にもビタミンD不足が問題とされているが, 大気汚染もビタミンD欠乏症発症の危険因子とされている報告がある。大気汚染物質の暴露は代表的な呼吸器疾患のみならず, 酸化ストレスや全身の炎症症状を増大させ, 循環器疾患や肥満とも関連していると述べている。地球温暖化による人間の健康影響は近い将来に終結するとは否めず, 各自が栄養摂取状況を意識し, 望ましい食生活に改善していく必要がある。化学物質過敏症の発症の機序として, 解毒作用の遅れが証明されており, 実際に米国の調査では解毒機能に関わるとされる一部栄養素の血中濃度が一般人よりも低いという報告がある。患者には, 解毒機能を高めるビタミンA, B群, C, グルタチオンなどの栄養素を含めた食品成分を意識して摂取するように指導をしている。化学物質過敏症患者との治療過程の中で, 生活環境の見直しと共に食事内容改善や栄養剤の服用により, 化学物質過敏症症状のみならず他の身体的不調が改善されるという報告もある。健康負荷にかかる要素の多い現在では, 室内環境改善と共に, 生命活動の要となる食事内容の見直しも化学物質過敏症患者に限らず, 国民全体における喫緊の課題と考える。
原著論文
  • 浦野 真弥, 太宰 久美子, 加藤 研太
    2022 年25 巻1 号 p. 85-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    柔軟剤等の使用に伴う健康被害の訴えが増加していると国民生活センターなどが報告しているが, これらの使用に伴う揮発性有機化合物(VOC)の挙動に関する情報は少ない。本研究では, 繊維質の違い, 製品成分の違い, 繰り返し使用時および使用停止時の揮発成分挙動を把握することを目的とした洗濯試験を実施し, 洗濯中および洗濯後の衣類からの揮発成分を吸着材に捕集してGC/MSの全イオンクロマトグラム(TIC)分析を行った。さらに検出されたピークのマススペクトルから物質を推定し, 確度の高い物質について, 沸点や蒸気圧, オクタノール水分配係数と揮発挙動の関係について解析した。繊維質について, ポリエステルで疎水性物質の揮発量が多くなり, 綿で親水性物質の揮発量が多くなる傾向を示し, 揮発成分組成が変わることが示された。また, これらは洗濯中の揮発成分組成とも異なっていた。ポリエステル繊維で柔軟剤等を繰り返し使用した場合の揮発成分挙動を調べた結果からは, 沸点および極性基の有無との関連が示唆され, 高沸点, 疎水性化合物ほど繰り返し使用時に揮発濃度が上昇していくことが示された。また, 本研究の範囲においては, 製品の使用を停止した後, 数回の洗濯で揮発濃度が大きく低下することが示され, 適当な頻度での使用停止が臭気質の変化や揮発量の増加抑制に効果的である可能性が示された。
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