室内環境
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解説
化学物質過敏症患者の症状緩和における食事の位置づけについて
―栄養学研究者からみた環境過敏症―
乳井 美和子 宮田 幹夫
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2022 年 25 巻 1 号 p. 75-83

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抄録
化学物質過敏症やシックビルディング症候群と栄養摂取状況の関連, 大気汚染や受動喫煙と栄養状態の関連など, 幅の広い環境問題と栄養の関連があるとされている。世界的にもビタミンD不足が問題とされているが, 大気汚染もビタミンD欠乏症発症の危険因子とされている報告がある。大気汚染物質の暴露は代表的な呼吸器疾患のみならず, 酸化ストレスや全身の炎症症状を増大させ, 循環器疾患や肥満とも関連していると述べている。地球温暖化による人間の健康影響は近い将来に終結するとは否めず, 各自が栄養摂取状況を意識し, 望ましい食生活に改善していく必要がある。化学物質過敏症の発症の機序として, 解毒作用の遅れが証明されており, 実際に米国の調査では解毒機能に関わるとされる一部栄養素の血中濃度が一般人よりも低いという報告がある。患者には, 解毒機能を高めるビタミンA, B群, C, グルタチオンなどの栄養素を含めた食品成分を意識して摂取するように指導をしている。化学物質過敏症患者との治療過程の中で, 生活環境の見直しと共に食事内容改善や栄養剤の服用により, 化学物質過敏症症状のみならず他の身体的不調が改善されるという報告もある。健康負荷にかかる要素の多い現在では, 室内環境改善と共に, 生命活動の要となる食事内容の見直しも化学物質過敏症患者に限らず, 国民全体における喫緊の課題と考える。
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© 2022 一般社団法人 室内環境学会
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