室内環境
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原著論文
クロルピリホス脱塩素化オキソン体の不可逆的神経毒性指標に関する研究
船水 純那五老 祐大徳村 雅弘山田 建太牧野 正和
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 26 巻 1 号 p. 3-14

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抄録
有機リン殺虫剤クロルピリホス(CPF)の脱塩素化体に注目し,一部の脱塩素化体を合成するとともに,アセチルコリンエステラーゼ50%阻害濃度(IC50)を測定した。ガランタミンのIC50Galを基準に相対活性値を算出した結果,CPFoxon; 3.16,3,5Cl-CPFoxon; 1.84,6Cl-CPFoxon; 1.04,NonCl-CPFoxon; 1.93,CPF; -0.39となり,脱塩素化にともない活性は低下傾向にあるが,ガランタミンよりも強いことが分かった。また,ドッキング計算から,この低下が基質反応部位と分子内リン原子との距離と関連していることが示唆された。次に,不可逆的な阻害能を評価する指標,神経毒性係数(NIF)を新たに定義した。これを算出した結果,CPFoxon; 4.6,3,5Cl-CPFoxon; 3.2,6Cl-CPFoxon; 2.0,NonCl-CPFoxon; 2.5,CPF; 1.2となり,測定したすべての脱塩素化体およびCPFにおいて,相対活性値と比較して顕著に増大することが分かった。不可逆的阻害能は,CPFoxonだけでなくCPFの長期的な神経毒性と関連すると考えられるため,神経毒性リスクをより高度に評価するうえで,NIFは有用な指標と見做せることがわかった。
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© 2023 一般社団法人 室内環境学会
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