ヒトの衣生活において,衛生に対する意識が高まる中で,洗濯は衣類の汚れを除去する重要な役割を持つ。様々な機能を有する洗濯洗剤が広く市販されているが,近年,微生物汚染を除去する洗濯洗剤の需要が高まっている。こうした背景には部屋干し衣類から発生する悪臭が挙げられる。悪臭の発生に関与する代表的な微生物が
Moraxella osloensisなどの皮膚常在菌である。これら細菌が,繊維に付着した発汗物や,油腺より分泌される中性脂質を栄養源とし増殖する結果,悪臭が発生する。この問題の解決策として高い洗浄力を有し,且つ,ヒトにとって有害な微生物の除去機能を有する洗濯洗剤が必要とされる。本研究では,先行研究によって
M. osloensisに対して有効的な効果を示した分岐型脂肪酸塩:2-ヘキシルデカン酸カリウム(isoC16K)に着目した。isoC16Kの除菌効果は洗剤・石けん公正取引協議会の定める除菌活性試験方法を参考に評価を行った。この手法の試供菌株が
E. coliと
S. aureusであり,isoC16Kを0.4%で使用することで,両菌株の生菌数を3 log以上,除菌することが明らかとなった。また,ヒトが着用した衣類に付着した細菌に対して除菌活性を測定した試験では,0.4%で3 log以上の生菌を除去することが明らかとなった。最終的に実施した,
E. coliに対して除菌の基準を満たす最小濃度を探索した結果,0.1%で2 logの生菌を除去する機能を有することが明らかとなり,isoC16Kは新たな除菌液体洗濯洗剤の開発に貢献できることが期待される。
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