室内環境
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原著論文
模擬発生源とチャンバーを用いたホルムアルデヒド放散速度の測定および病理検査室の実環境測定による検証
佐伯 寅彦 穴井 俊博小林 徳和湯 懐鵬鍵 直樹
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 26 巻 3 号 p. 169-180

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抄録
医療機関等で行われる病理検査では臓器や組織をホルマリンで固定するため,作業時にホルムアルデヒドが発生する。そのため,病理検査室ではホルムアルデヒドの室内への拡散を抑制する局所排気装置等の措置が必要であるが,十分に機能していない場合も多い。ホルムアルデヒド曝露対策を適切に計画するには作業時に発生するホルムアルデヒドの量を把握する必要があるが,これを理論的に求めることは困難である。筆者らは病理検査室の換気設計に必要な基礎データを得るため,ホルマリン固定した豚精肉およびホルマリン液面からのホルムアルデヒド放散速度をチャンバー試験にて測定した。また,実作業中の病理検査室で室内ホルムアルデヒド濃度の実測を行い,作業場所1か所あたりからのホルムアルデヒド放散速度を算出した。チャンバー試験の結果,豚精肉とホルマリン液面のいずれもその放散速度は設置後40分間は時間による変化はなく,またいずれも温度依存性が確認された。また,実作業中の測定結果より切り出し等の作業での放散速度は作業場所1か所あたり139 mg/h~203 mg/h,ホルマリン槽の開放を伴う作業はこれに加えてホルマリン液面からの放散速度を加算した値となり,作業場所の数とホルマリン槽の開口部面積が分かればホルムアルデヒドの放散量を見積もることができることが分かった。
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© 2023 一般社団法人 室内環境学会
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