抄録
多孔質ガラスとβ-ジケトンからなるホルムアルデヒド(以下,HCHOと略す)分析チップを用いて,2023年夏季及び冬季に仙台市とその近郊の一般住宅で室内HCHO濃度を測定した。2023年夏季は例年より平均気温が2 °C高かった。HCHO濃度は分析チップの室内曝露前後の414 nmの吸光度差を用いて算出した。測定では夏季及び冬季各々で142,144部屋のHCHO濃度とアンケート調査での回答を得た。HCHO濃度の平均値は37 ppb(夏季),19 ppb(冬季)となり,また室温が1 °C上昇するとHCHO濃度は1.09倍になった。換気は窓開けによる換気が一番効果的で,集合住宅の場合30分の窓開けで60%濃度が低くなるという計算結果となった。
また室内材として用いられる建材のHCHO吸着性能についても実験した。壁紙,畳用イ草シート,珪藻土を実験対象として,珪藻土の吸着性能が最も高い結果となった(160 ppb,1 Lの雰囲気中で23.0 ng/g)。室内のHCHO濃度は低くなる傾向にあるとはいえ,夏季にはこれまでに経験したことのないような高温がみられ,時に応じて室内環境を測定することは重要で,開発した分析チップは有効なツールと考えられる。