抄録
快適性を向上させるために,温熱や光,音等様々な観点から研究がなされているが,快適かどうかを評価する際に考慮すべき要因の一つとして,例えば暑がりや寒がりといった快適性に対する個人差がある。個人差はオフィス等の多くの個人が使用する環境においては特に問題になる要素であり,個人の快適性がどのような要因によってどのように決定されるのか,すなわち個人差を明らかにすることは,人の快適性をさらに向上できる個人に合わせた快適な空間の創出に貢献できる。
本研究ではアンケート調査を主体として,評価グリッド法および経験サンプリング法を準用した独自の手法により,オフィスおよび在宅勤務の主観的快適性の評価構造を明らかにした。オフィスおよび在宅勤務において,主観的快適性の喚起要因としては温熱要因が大きく影響するが,湿度や光,音,内的要因といった温熱以外の要因の影響が存在することが明らかになった。また,クラスター分析により,影響度の違いによって個人が「内的タイプ」,「バランスタイプ」および「温熱タイプ」の3タイプに分類できることが示唆された。オフィス勤務における予備調査およびサンプルサイズを増やした本調査により,これらの結果の頑健性を示すことができ,在宅勤務においても同様の傾向が確認されたことから,得られた結果が幅広い労働環境に適用できることが示唆された。