抄録
い草は水抽出液において枯草菌やサルモネラ菌,大腸菌,レジオネラ菌,皮ふ常在菌などに対して,広く抗菌効果を有していた。このなかでもレジオネラ菌や大腸菌に対する抗菌効果は浴室内,特に循環浴槽の微生物制御への利用可能性が期待される。またい草の内部は星状細胞からなる海綿状組織が発達した多孔質の構造をとっていることから,悪臭成分やホルムアルデヒド,二酸化窒素などに対して高い吸着機能を有している。加えて悪臭の原因となる微生物に対しても抗菌効果を有していたことから,微生物が原因となる生活臭や室内汚染物質の防除という観点からも畳は有用であることが示唆される。真菌類に対しては白癬菌に対して抗真菌効果を有していたが,アスペルギルス菌やリゾープス菌といったカビは効果が認められなかった。一方で納品前の畳表からはほとんどカビが検出されなかったことから,新畳で発生しやすいカビは畳表由来ではなく,室内環境に浮遊しているカビ胞子が落下したことにより,繁殖をしていることが示唆された。更にい草の香気成分は大腸菌に対して,抗菌効果が認められなかったことから,い草の抗菌作用は香気成分ではなく,水溶性成分が主体となっている可能性が示唆された。