室内環境
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原著論文
2-ブチルオクタン酸カリウムによるアカントアメーバ及び細菌の防除効果
西田 彩恵飛田 幸祐中島 淳森田 洋司森田 洋
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 28 巻 1 号 p. 23-32

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抄録
Acanthamoeba castellaniiは自然環境及び室内環境中に生息している原生生物であり,難治性のアカントアメーバ角膜炎の発症や,呼吸器疾患のレジオネラ症の要因となる可能性が問題となっている。アカントアメーバ角膜炎は汚染されたコンタクトレンズの装着が主な要因で,消毒液の抗アメーバ効果が低いことが指摘されている。また,レジオネラ症においては冷却塔におけるバイオフィルム内のアメーバを制御することがレジオネラ属菌の発生を予防することに必要である。そこで,本研究では分岐型脂肪酸とそのカリウム塩であるisoC12及びisoC12Kを用いて,A. castellaniiに対する殺アメーバ効果を検討した。また,効果の高かったisoC12KについてはS. aureusE. coliに対する殺菌効果についても評価を行った。10分接触で4 logの減少を示した試験薬剤は,isoC12Kのみであり,その濃度は110 mM (2.5 wt%)であった。isoC12は今回検討した最も高い濃度である1000 mM(20 wt%)においても,10分接触で完全な死滅は観察できなかった(>1000 mM)。また,isoC12Kへの10分接触で6 logの減少を示した濃度はE. coliにおいて2.5 wt%(105 mM),S. aureusにおいて0.63 wt% (26.2 mM)であった。アメーバにおいて,isoC12Kでは短時間によるプラスマレンマの破壊が認められたことから,作用機序は膜への作用が示唆された。本研究により高い殺アメーバ効果を有しており,かつ特有の刺激臭のないisoC12Kがケア用品および殺アメーバ剤に利用されることを期待する。
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© 2025 一般社団法人 室内環境学会
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