抄録
従来,ホルムアルデヒドと他のVOCsの同時分析には異なる分析系(HPLCおよびGC/MS)が必要なため,分析工数が増加し,効率性に課題がある。そこで本研究では,室内環境中のホルムアルデヒドおよびその他の揮発性有機化合物(VOCs)を同時に捕集・分析可能なパッシブサンプリング法の構築を試みた。ホルムアルデヒドをo-(2, 3, 4, 5, 6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン(PFBHA)塩酸塩で誘導体化し,GC/MSによる測定を可能とする手法をパッシブサンプリングに適用した。吸着剤として,PFBHA含浸シリカゲルと活性炭の混合物を使用し,湿度変動に伴うサンプリングレート(SR)の安定化を図った。最適な吸着剤比率は,300 mg : 300 mg(活性炭:含浸シリカゲル)とし,曝露試験により各VOCsのSRを算出した。その結果,トルエンで0.115 L/min,ホルムアルデヒドで0.247 L/minと良好な捕集速度を示した。さらに,湿度10~80%RHおよび温度15~35℃の範囲においても,SRは±15%以内の変動に収まり,定量値に対する影響はほとんどないことが確認された。本手法は,簡便かつ高感度な測定を可能とし,室内空気質のモニタリングにおいて有用であることが示された。