室内環境
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原著論文
室内空気中のアルデヒドおよびその他揮発性有機化合物の同時測定を実現する新規パッシブサンプリング手法の開発
松下 尚史 石坂 閣啓川嶋 文人
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2025 年 28 巻 2 号 p. 119-129

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抄録
従来,ホルムアルデヒドと他のVOCsの同時分析には異なる分析系(HPLCおよびGC/MS)が必要なため,分析工数が増加し,効率性に課題がある。そこで本研究では,室内環境中のホルムアルデヒドおよびその他の揮発性有機化合物(VOCs)を同時に捕集・分析可能なパッシブサンプリング法の構築を試みた。ホルムアルデヒドをo-(2, 3, 4, 5, 6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン(PFBHA)塩酸塩で誘導体化し,GC/MSによる測定を可能とする手法をパッシブサンプリングに適用した。吸着剤として,PFBHA含浸シリカゲルと活性炭の混合物を使用し,湿度変動に伴うサンプリングレート(SR)の安定化を図った。最適な吸着剤比率は,300 mg : 300 mg(活性炭:含浸シリカゲル)とし,曝露試験により各VOCsのSRを算出した。その結果,トルエンで0.115 L/min,ホルムアルデヒドで0.247 L/minと良好な捕集速度を示した。さらに,湿度10~80%RHおよび温度15~35℃の範囲においても,SRは±15%以内の変動に収まり,定量値に対する影響はほとんどないことが確認された。本手法は,簡便かつ高感度な測定を可能とし,室内空気質のモニタリングにおいて有用であることが示された。
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© 2025 一般社団法人 室内環境学会
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