抄録
感染症の流行時における公共交通機関での感染リスク低減に加え,大気中粒子(PM2.5など)への曝露抑制策として,中性能フィルターの有効性とその経時的な性能変化について実験室および実環境での調査を行った。室内試験では,3種の帯電フィルターを用い,粒子の長期捕集による圧力損失および捕集効率の変化を測定した。その結果,使用開始後から時間経過とともに捕集効率が顕著に低下し,開始時に79%,48%,69%だった捕集効率が,73日後に43%,6.7%,21%となった。この主因はフィルターの帯電性の喪失であった。高濃度で粒子を噴霧させた試験では,大きな粒子の除去には物理的な目詰まり効果が寄与していた。除電処理後の試験では,小さな粒子の除去効率が大幅に低下し,小さな粒子の除去は主に帯電による捕捉によることが示唆された。さらに,実運行されているバスに搭載されたフィルターの性能評価において,フィルターを2年間使用した後でも20 /h程度の相当換気回数が維持されている車両があった一方で,6ヶ月の使用で10 /hにまで低下している例もみられた。バスにおける種類別のフィルターの性能変化は,室内試験における性能変化と同様の傾向であった。本研究は,中性能フィルターの経年変化の実態と要因を明らかにし,公共交通における空調設計やフィルター交換時期の検討に資する知見を提供する。