抄録
次亜塩素酸は強力な酸化作用を持つため,殺菌やウイルスの不活化など,様々な用途で使われている。また,次亜塩素酸は揮発すると,酸化作用を保持したまま空気中に存在できる。本研究では,気体状の次亜塩素酸がスギ花粉やそのアレルゲン(Cry j 1)を不活化する効果と,そのメカニズムを調べた。まず,Cry j 1を気体状次亜塩素酸に曝露し,ドットブロット法とサンドイッチELISAを用いてCry j 1の活性の変化を調べた。さらに,SDS-PAGEおよびLC-MS/MSを使って,Cry j 1のアミノ酸配列に生じた変化を解析した。その結果,次亜塩素酸に曝露されたCry j 1は不活化され,その原因はCry j 1のペプチド結合が不規則に分断されたためであることが分かった。また,スギ花粉を気体状次亜塩素酸に曝露したところ,花粉の機能が不活化され,アレルゲンの放出が抑制されることも明らかになった。