抄録
癌による死亡を低減するため癌の早期診断が叫ばれている。1980年代後半からの微量成分分析の進展により,健常者と癌患者間の呼気中の揮発性有機化合物(Volatile organic compounds, VOCs)の成分量が異なることが判明し,呼気による癌の早期診断の期待が高まっている。本稿では,癌及び呼気中VOCsの癌バイオマーカーの発生機構,呼気VOCs測定法,及び評価事例について整理した。呼気VOCsは主にガスクロマトグラフ質量分析法により測定されるが,近年はソフトイオン化等の原理を利用した測定も増えている。測定された個々のVOCsは様々な統計的手法により評価されバイオマーカーとして特定される。各種の癌に共通のバイオマーカーとして脂肪族・芳香族炭化水素及びアルデヒドが特定され,その他のVOCsも特定されている。最近はセンサアレイや電子鼻システムを活用した研究も進められ,物質を特定せず複数のセンサの応答パターンについて健常者との違いを解析して癌の有無を識別し,有用な成果が得られ一部は実用化されている。これらの研究の更なる進展により,呼気分析が従来の診断に代わる癌の早期診断法として確立されることが期待されている。