抄録
本研究はアンケート調査に基づき, 室内の化学物質に起因すると考えられる自覚症状の実態について検討を行った。さらに住宅工法や住宅形態, 内装仕上材, 通風条件などの住環境および在宅時間, 冷暖房機器の使用状況とその時の換気状況などの暮らし方と自覚症状の知覚率との関係を検討した。調査対象は1990年代以降に開発された住宅地の住宅が中心である。調査方法は質問紙調査とし, 留置, 郵送を併用して行った。回収状況は留置が343/437部(78.5%), 郵送が253/305部(83%)で, 計596/742部(80.3%)であった。
室内の化学物質に起因すると考えられる自覚症状については, 調査対象世帯の12.6%(N=596), 個人対象では4.7%(N=2247)に知覚者が認められた。年齢では30代~50代の知覚率が高く, 性別による差は少なかった。申告された自覚症状は目や鼻に対する刺激が多く, それらは入居後間もなく知覚される割合が高かった。
居住者の自覚症状の知覚率と住環境属性をクロス集計し, 知覚率の差から問題点について考察することを試みた結果,特に1990年以降に建築された住宅や集合住宅の居住者, 通風条件の悪い居住者の知覚率が高かった。暮らし方との関係では長時間冷暖房機器を使用する居住者の知覚率が高く, 在宅時間と知覚率との関係では男女差がみられた。さらに, アレルギー性疾患を有する居住者の知覚率も高い傾向があり, 個人の体質も自覚症状の知覚に関与すると推察された。