抄録
室内空気質の測定において, アクティブ法, パッシブ法, 検知管法が採取・測定法として挙げられるが, 現場の状況に応じたサンプリング法や分析法を適切に選択することは, 苦労を伴う作業となる。本研究では, 拡散型サンプラーを用いるパッシブ法による室内環境測定や, サンプラーの使用実態の問題点を探り, どのような測定を行うことが望ましいのかについて検討することを目的とし, 特に分析手法やパッシブサンプリングでの定量において重要である捕集速度(以下, SRとする。)等に関する現状や使用実態に関して調査票による調査を行った。調査対象は, 地方自治体の衛生・環境系の研究所(以下, 公的機関とする。), および薬剤師会関係試験検査センター(以下, 薬剤師会とする。)の室内空気質測定担当者とした。調査票を配布した173施設中, 135施設(公的機関95施設, 薬剤師会40施設)より回答を得ることが出来た。調査の結果, アクティブ法を試料採取方法として選択する理由は, 「分析精度」と「信頼性」であり, パッシブ法では, 「作業の容易さ」であった。また, パッシブ法での定量において必要なSRは, 使用しているサンプラーの説明書に記載されている値を使用しており, 値が記載されていない物質は, 分析対象としていないことが明らかとなった。パッシブ法に対する意見として, SRの信頼性や分析精度に関するものが多く, 適切な分析方法やSRの情報提供を行うことが必要である。