2025 年 28 巻 p. 27-40
大学における留学生への日本語授業は、教師が複数の留学生を指導する形態が一般的である。しかし、授業によっては、教師とともにサポート学生が授業に参加し、留学生の学習支援を行うことがある。サポート学生は、単独または複数名で授業に参加し、留学生の学習を助ける様々な活動を行う。支援の内容は各教育機関や授業によって異なり、授業担当教師の裁量に委ねられることが多いが、サポート学生の活用に関する情報は広く共有されていない。本調査では、サポート学生活用の実態に関する基本情報の収集を目的とし、日本語教師を対象に小規模なアンケート調査を実施した。その結果、約90%の教師がサポート学生を授業で活用した経験があることがわかった。また、教師はサポート学生に「会話の練習相手」、「同世代のリアルな日本文化・日本語のリソース」など〈学習を支援する学生〉としての役割だけでなく、留学生と対等の立場で授業に参加する〈共に学修する学生〉としても期待していることがわかった。
一方で、サポート学生の無断欠席や授業内での役割の認識のずれなど、授業運営上のトラブルに関する情報も得られた。サポート学生を交えた授業の円滑な運営には、事前準備やサポート学生との情報共有が重要であるとともに、サポート学生の役割や活動内容を明確化することがトラブル回避につながるという知見が示された。
サポート学生の活用は、留学生だけでなくサポート学生にも学びの機会を提供しうる教育活動であるが、教師の負担が増大することや、サポート学生の活用を不要と感じる教師や留学生が一定数存在することにも留意する必要がある。
In university-level Japanese language courses for international students, the standard teaching format typically involves one teacher instructing multiple students. However, some courses incorporate “support students” who are native Japanese speakers. These students assist international students in their learning. They often participate in courses individually or in groups by engaging in various activities to aid the learning process. The content of support varies from each educational institution and course, and is often left to the discretion of the class teacher, but information on the utilization of support students has not been widely shared. This small-scale questionnaire survey of Japanese-language teachers was conducted to collect basic information on the actual status of support student utilization. The results showed that about 90% of the teachers had experience using support students in their classes. The survey also revealed that teachers expect support students not only to serve as “students who support learning,” such as conversation practice partners and realistic resources of Japanese culture and language for their peers, but also as “students who learn together,” participating in class on an equal footing with the international students.
On the other hand, challenges such as unapproved absences and misalignment in role expectations were reported, indicating potential issues in classroom management. These findings emphasized the importance of prior preparation and follow-up, as well as the need to clearly define the roles and responsibilities of support students to avoid misunderstandings and disruptions.
While utilizing support students provides valuable learning opportunities for both international and support students, it also increases the workload for teachers. Moreover, a portion of teachers and learners expressed that support students were unnecessary in their courses.
These factors must be considered to optimize the effective integration of support students in Japanese language education.
大学等の高等教育機関における留学生に対する日本語の授業は、一人の教師が複数の学生を教えることが一般的であるが、履修者の多いクラスでは個々への対応が困難であり、授業中の留学生の発話回数も制限されがちである。こうしたマイナス要素の軽減と異文化間交流の活性化を目指し、日本語を母語とする大学生(本稿ではサポート学生1と呼ぶ)が授業に参加し留学生の学習支援を行う場合がある。
2021年、文化庁文化審議会によって提示された「日本語教育の参照枠」においては、日本語学習者を「単に『言語を学ぶ者』ではなく、『新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、より良い人生を歩もうとする社会的存在』」(文化庁, 2021, p.6)と定義した。こうした指針を踏まえると、日本語授業へのサポート学生の導入は、留学生に異文化コミュニケーションの場を提供するものであり、異文化コミュニティへの参画や異文化交流の促進にもつながるものと考えられる。
一方、筆者らは、サポート学生を導入している同僚教師から「サポート学生に入ってもらったが、うまく活用できなかった」、「何をしてもらったらいいのかわからない」といった、サポート学生の活用に関する相談を受けることもある。実際、サポートの具体的な活動内容は、当該科目や留学生のレベル、教師の目的などによって様々なこともあり、サポート学生の活用のノウハウや概括的な情報はあまり知られていない。また、サポート活用の成功例は報告されるが、失敗事例や試行錯誤の過程は個人の中に閉ざされがちで、研究・報告という形で共有されにくい。そこで本稿では、日本語教師のサポート学生の活用実態の概要を把握することを目的とし、アンケートによるパイロット調査を実施した。
なお、留学生の学習支援者として、有償雇用のTAや学外母語話者が授業に参加する場合もあるが、無償で参加するサポート学生と、授業参加に責任や義務が生じる有償雇用のTAとでは、教師の対応が異なると考えられる。また学外母語話者は教師にとってもゲストであり、この場合も教師の接し方が異なる可能性がある。そのため、本調査でのサポート学生は、無償で留学生の授業に参加し学習を支援する学内の学生に限定した。
母語話者支援者を活用した日本語授業の実践報告によると、その目的や運用は様々である。漢字など特定の技能授業に学内外の支援者を導入したケース(向井・高橋, 2009; 2013)や、インタビューやスピーチ練習といった活動や、キャンパスツアー、短期研修コースなど、通常の授業以外で学生サポートを活用するケース(園田他, 2006; 大石, 2012; 鈴木, 2019)も報告されている。
こうした新しい取り組みや成功例は実践報告などの形で公開されるが、具体的な活動内容は教育機関や授業によって多岐に渡るため、日本語教育全体におけるサポート学生の活用実態や、授業への導入目的は把握されにくい。田川・久保(2024)3は、学内の日本語授業担当教師7名を対象に、サポート学生(ボランティア)の授業参加への認識について、アンケート調査を行った。ボランティアに参加してほしいか、ボランティアにどのような役割を期待するかなど4項目への回答には、ボランティアの授業参加に肯定的な見解とともに、教師の負担など否定的な回答もあったとしているが、回答者も質問項目も少ないため、概要を把握するには調査規模を拡大する必要がある。
また、サポートを必要としない教師の存在や、成果発表を目的としない実践、失敗に終わった実践は表面化しにくく、これらもサポート学生活用の実態が十分に把握されない一因となっている。サポート学生導入に伴うトラブルやその対処法などが取り上げられることも少ない。高橋(2007)は、サポート学生を導入した短期コース終了後に、教師側、サポート学生側双方から出された不満や批判を聞き取り、具体的な対応策を立て実施している。このような個々の教師の経験に基づく貴重な知見やノウハウは、より広く集積、共有されるべきであろう。サポート学生の活用実態を把握するとともに、教師の狙いや取り組みについても理解するため、多くの教師から情報を収集する必要がある。
本調査は日本語教育におけるサポート学生の活用実態の把握を目的とし、留学生の日本語教育に携わる教師に試行的にアンケート調査を実施した。なお、学生の国際化や異文化理解の促進を目的とし、留学生と日本人学生を交えた国際共修授業があるが、留学生も日本人学生も指導対象者であり単位履修者である点で留学生の日本語授業とは本質的に異なるものであると考え、本調査では対象に含めない。
3.2 調査の方法と内容広く情報を収集するためGoogleフォームを用いてアンケートを作成しWeb上で調査を実施した。調査期間は2022年8月から9月であった。調査者の経験や周囲の日本語教師からの聞き取りをもとに質問項目を検討し、1.日本語教育歴、2.サポート学生活用経験の有無、3.実施した教育機関、4.サポート学生の募集方法、5.サポート学生の必要生、6.サポート学生を要する科目、7.教師が期待するサポート、8.サポート学生を要するクラスのレベル、9.サポート学生活用の際の留意点、10.サポート学生導入に伴うトラブル、11.教育機関による違い、12.オンライン授業でのサポート学生導入、13.その他(コメント)の13項目に絞った。項目1から4は協力者の背景情報の把握を目的とし、項目5から8はサポート学生に対するニーズ把握、項目9から12は留意点やトラブルなどに関する事例収集を目的とし、自由記述による回答を求めた(付属資料参照)。アンケート回答時間は30分程度と想定した。項目8までは選択肢ごとに回答者数を集計した。自由記述の分析方法については後述する。
協力者の募集にあたっては、調査者らの所属機関を中心に、日本語教育に携わる日本語教師にメールで回答と拡散を依頼し協力者を募った。非常勤講師として複数の教育機関において従事する教師や過去の経験も含まれるため、対象機関数は特定できない。個人情報の保護、データの取り扱いなどについて了承を得たうえで、50名から回答を得た。なお、本調査は防衛大学校の倫理審査委員会の承認を得ている。
まず項目1の結果から、今回の協力者の日本語教育歴は、10年未満6%、10~20年24%、21~30年54%、30年以上16%であり、比較的、教育歴の長い教師が多かった。項目3のサポート学生を活用している教育機関については、国内の大学、大学付属の別科や国際交流センターが98%を占めた。
項目2のサポート学生活用経験の有無については、90%にあたる45名が「ある」と回答した。サポート学生の活用経験に基づく教師の考えを把握するため、以下ではこの45名を分析対象とする。本稿では、サポート学生の必要性(項目5)、教師が期待するサポート(項目7)、サポート学生を活用する際の心がけ・留意点(項目9)、サポート学生導入に伴うトラブル(項目10)の4項目を中心に分析する。
4.1 サポート学生の必要性についてサポート学生の必要性については、「授業による」80%、「できれば毎回」12%、「どちらでも構わない」6%、「不要」2%となった(図1)。

サポート学生の必要性(%)
「どちらでも構わない」を選択した協力者は自由記述欄に「どの大学でもサポート学生を『毎回のクラスでお願いしたい』としていますが、学生は長続きしません。(中略)来たり来なかったりなので、来た時と来ない時の両方に対応できる内容を準備します。サポート学生と留学生が共に学び合える環境を目指したいと思うので、努力していますが、サポート学生が入ることで教員の負担が増えるということも事実です」と記述している。「不要」と回答した協力者は「気が散る。緊急の必要性がないのでサポート学生への指示が煩わしい」と記述している。サポート学生導入が教師にとって負担になる場合があることがわかる。
4.2 教師が期待するサポートについて教師が期待するサポートについて複数回答で回答を求めた。その結果、「ペアワークの相手」が最も多く、次いで「リアルな日本文化のリソース」、「リアルな日本語のリソース」と続いた(図2)。ちなみに、質問項目6の「サポート学生を要する科目」(複数回答)については「口頭表現」、「日本文化事情」が非常に多かった(図3)。

期待するサポート(人)

サポート学生を要する科目(人)
一人の教師が提供できる時間と情報は限られる。母語話者が多ければ留学生により多くの口頭練習の機会が提供できる。また、同世代母語話者との真正性の高いやりとりやリアルな情報は、教師からは与えることのできない貴重な教育資源となる。教師はサポート学生を留学生にとっての異文化接触の窓口としても活用していると考えられる。
期待するサポートに「その他」と回答した11名の自由記述は、「見学先への帯同」、「資料の配布・回収」、「(留学生の)モチベーションの向上」など、多岐に渡る一方、サポートという立場での授業参加を求めていないとする記述が5件あった。(「上級レベルのクラスではサポートというよりも同じ大学生として対等な立場でディスカッションに加わってほしい」、「サポートするという役割ではなく、留学生と日本人学生が共に一つのタスクを達成する、相互理解の方向にもっていきたい」、「サポートされる側とする側とが対等な関係を作ること。それにより、言語(日本語)によって作られるパワー関係が変わること」、「留学生と同じ立場で授業に参加してもらう」など。)これらの記述に共通するのは、サポート学生と留学生の対等性である。留学生は支援される側に置かれやすいが、授業によっては、留学生とサポート学生が対等な立場/関係で授業に参加し共に学ぶことが期待されていることがわかる。
4.3 サポート学生を活用する際の心がけ・留意点についてサポート学生活用の際の心がけ・留意点については自由記述で回答を求めた。サポート学生に関する記述を抽出し、その内容から【授業に関する説明】【授業の中でのサポート学生の役割】【サポート学生からの聞き取り】【サポート学生への配慮】の項目を立て分類した。留学生側への言及やサポート学生・留学生の両方への言及(「留学生に、サポート学生に支援してもらえることを伝える」、「ペアワークでいろいろな人と組めるように心がける」など)は【その他】とした。(図4)

サポート学生活用の際の心がけ・留意点(件)
最も多かったのは【授業に関する説明】で、「事前に授業で行う学習事項を伝えるようにする」、「教材やプリントなど可能な限り準備する」、「留学生のレベルの情報共有」など22件であった。
次に多かったのが【授業の中でのサポート学生の役割】に関する記述であった。具体的には「どのような役割を期待しているのか伝える」、「日本語を教える先生にならないようにしてもらう」、「日本語を教えることではなく、話し相手になることである点を確認」、「上下関係ではなく、同じ活動に参加する学生同士として」といった記述が19件みられた。
また【サポート学生への配慮】に関しては16件あった。具体的には「サポート学生が緊張しないような雰囲気作り」、「留学生と良好な関係が築けるように」、「サポート学生を学生ではなく大人として扱い尊重する」、「話のきっかけになるトピックやアクティビティを用意する」といった記述のほか、「一緒に学ぶことやサポート学生のほうも学べる関係」、「サポート学生に学びがあるように意識させる」、「サポート学生にとっても学びの時間になるように」など、サポート学生にも参加意義を持たせようとする配慮もみられた。
【サポート学生からの聞き取り】には、「授業後も可能であればコメントをもらうなどしてコミュニケーションをとる」、「授業後にサポート学生からサポートの状況などを聞き、問題があれば話し合う」、「日本人学生にも日誌のようなものを書いてもらっていた」などの記述があった。教師はサポート学生に対し、教師のように振る舞うことは望んでおらず、留学生と良好な関係で授業に参加してもらえるよう、様々な配慮を行っていることがわかる。
4.4 サポート学生導入に伴うトラブルについてサポート学生活用に際してのトラブル(自由記述)については、45名中の25名が、何らかのトラブルがあったと回答した。最も多かったのは「ドタキャン」、「無断欠席」、「遅刻」など出欠席に関するものが11件で、さらに、「特にトラブルにはならないのですが、学生のドタキャンは困ります」、「特になし。(サポート学生の遅刻や連絡なしの欠席などは想定内のこととして準備をしているので)」など、トラブルはないとしながら、無断欠席に関する言及が3件あった。
このほかの特徴的な記述を内容ごとにまとめる。サポート学生の能力に関するものとして、話題がない、または日本語コントロールが不十分なため「留学生と会話が続かない」、「ファシリテーターをお願いしたのにディスカッションのテーマからずれてしまった」、「配付した資料が読み取れない」という回答があった。
サポート学生の態度に関しては「上から目線」、「先生としてふるまう」、「指導内容を訂正したり、勝手に他の言い方を教えたりする」などに加え、「(サポート学生が)内職を始めてペアワークをしてくれなかった」、「日本人でも理解できないひねった回答をするのでフォローに困った」、「大人数で突然やってきた」といった記述もあった。
また「欧米系の留学生がいるクラスにかえてほしいという要望があった」、「『自分も英会話がしたい』ような感覚で応募してくる学生が、(略)日本語を介して参加することにがっかりした様子を見せることもありました」という記述から、サポートを英会話の練習機会と捉えるサポート学生に教師が戸惑っていることがわかる。一方、留学生側の問題としては「サポート学生との授業に集中しない」、「サポートが入ることを嫌がる学生がいる」などがあった。
今回の調査協力者中、サポート学生活用経験がある教師は90%で、サポート学生の必要性については「できれば毎回」と「授業による」を合わせると92%に達した。この数字から、今回の協力者はサポート学生の活用に積極的であると言えよう。一方で、「どちらでも構わない」・「不要」と回答した教師はその理由として、サポート学生が来ない場合の準備が必要であること、指示の煩わしさなどを挙げていた。サポート学生の活用が教師の負担になることが指摘できる。
5.2 サポート学生に期待すること今回の調査から教師がサポート学生に期待する役割は大きく二つ挙げられる。一つは、教師を補助しつつ留学生の学習を手助けする〈学習を支援する学生〉、もう一つは留学生と対等な立場で授業に参加し共に学ぶ〈共に学修する学生〉としての役割である。ここでの「学修」は主体的な学びと成長を意味し、知識の習得を意味する「学習」とは異なるものとする。
まず、〈学習を支援する学生〉としての役割について述べる。教師はサポート学生に、ペアワークの相手やグループワークのサポートなど、日本語でのコミュニケーションを中心とした活動での支援を期待していた。また、日本語・日本文化のリアルなリソースとしての役割を期待する教師も多かった。サポート学生とのやりとりを通じて留学生は現代の日本社会や文化、同世代の価値観などの異文化に触れ、よりリアルな知識を得ることができる。教師はサポート学生に対し、留学生の〈学習を支援する学生〉としての役割を期待しているといえよう。
次に〈共に学修する学生〉について述べる。サポート学生に期待する役割についての自由記述回答には、留学生との対等性に言及する記述が複数みられた。これらの記述から一部の教師は、支援する/されるという関係ではなく、サポート学生が留学生と対等な関係で、〈共に学修する学生〉として授業に参加することを望んでいるといえる。
5.3 「期待する役割」と「心がけ・留意点」についてサポート学生に対する教師の期待には〈学習を支援する学生〉と〈共に学修する学生〉の二つの側面がみられたが、期待する内容に応じてサポート学生導入への心がけ・留意点が異なる可能性がある。そこで、教師の求める役割と心掛け・留意点の回答を対照したところ、以下のことがわかった。
サポート学生に対する期待として「ペアワークの相手」、「グループワークのサポート」と回答した教師は、心がけ・留意点について「日本語を教えることではなく、話し相手になることである点を確認」、「授業の目標とサポート学生の役割を説明する」などと記述していた。〈学習を支援する学生〉としての参加を期待する教師は、授業項目や授業内での役割をサポート学生に明確に伝え、必要なサポートを具体的に示すよう留意しているといえる。
一方、サポート学生と留学生との対等性に言及した教師は、心がけ・留意点について「サポート学生にとっても学びの時間になるように考えている」、「一緒に学ぶことやサポート学生のほうも学べる関係を作れるように」と記述していた。サポート学生に〈共に学修する学生〉としての役割を期待する教師は、留学生とのラポール形成や、共に学べる教室運営や授業設計を心がけていることがわかる。
多くの教師は、サポート学生が留学生に対し教師のように振る舞うことを望んでいない。しかし、日本語力の低い留学生に接したサポート学生が、「サポート」を教えてあげることと認識したとしても不思議ではない。〈共に学修する学生〉としての授業参加を求めるのであれば、教師とサポート学生の役割分担や、授業でのサポート学生の具体的な活動内容を明確化する必要がある。
サポート学生を活用する教師は、必要なサポートを引き出すために活用目的に応じた様々な配慮を行っていることが確認できる。〈学習を支援する学生〉・〈共に学修する学生〉、いずれにしても、サポート学生を活用する際には、通常の授業以上の準備や配慮が必要となる。4.1で示したように、サポート学生の活用を「煩わしい」、「負担が増える」と捉える教師が少数ながらいたことも理解できる。
5.4 サポート学生導入により生じるトラブルと対応策サポート学生の活用に伴うトラブルに関しては、サポート学生の出欠席に関する言及が最も多かった。4.1で「サポート学生が来た時と来ない時の両方に対応できる内容を準備する」という記述を挙げたが、通常授業以上の準備を要するため教師にとって負担となる。
欠席以外のトラブルとしては、習熟度が低い学生との日本語でのやり取りがうまくいかない、話題がなく会話が続かないといった、留学生とのやり取りに関する言及が複数あったが、これについては教師側の配慮で回避できるように思われる。サポート学生活用の留意点として複数の教師が、授業の目的や流れ、その中でサポート学生に期待する活動を具体的に示すことなどを挙げていた。授業の目的やサポートの内容を具体的に示すこと、留学生の日本語レベルの情報共有など、これら【授業に関する説明】は、授業時間内でのトラブルを最低限に抑えるためにも有効であると考えられる。
本稿の目的は、高等教育機関の日本語教師によるサポート学生の活用実態の概要を把握することであった。本調査に協力した教師の多くがサポート学生を必要と考えており、特に、会話練習のパートナーや、リアルな日本(語)のリソースとして〈学習を支援する学生〉という側面に期待していることが示された。加えて、留学生と〈共に学修する学生〉として、サポート学生自身も学びを得ることを望む教師がいることも明らかになった。また、サポート学生活用に伴うトラブルへの対応について、多くの実践的な知見が得られたことは有益であった。質問紙13.その他(コメント)の欄に、「サポート学生活用に関する様々な事例が共有できたらありがたい」、「他の先生がどのようにサポート学生を活用しているのか具体例を知りたい」といったコメントが寄せられた。これらは、サポート学生の活用に関する情報を必要とする教師が一定数いることを示している。個人の実践に基づく様々な知見を集約し、広く共有することで、サポート学生のより円滑な運用につながると考えられる。
サポート学生の活用により教師に負担が生じることも確認されたが、それでも多くの教師がサポート学生を活用するのは、それが留学生、あるいは留学生とサポート学生双方にとっての学びにつながると考えているからであろう。
ただし、本調査は、調査者の所属機関を中心に協力者を募ったため、データに偏りが生じている可能性がある。また、項目間の関連については検討の余地がある。例えば、留学生のレベルや授業科目と、教師が期待するサポート学生の役割の対応関係については、分析することができなかった。さらに質問項目を精査し、調査規模を拡大したうえで再検証することを今後の課題としたい。
1.ご自身の日本語教育歴について該当するものを選んでください。
〇10年未満 〇10-20年 〇21-30年 〇31年以上
2.ご自身の留学生に対する日本語授業にサポート学生が入ったことがありますか。(日本語学校、地域日本語教室、大学の共修科目の授業は含みません。)
〇ある 〇ない
3.日本語授業でサポート学生を導入している高等教育機関はどちらですか。(複数回答可)
□専門学校 □短期大学 □大学(センター、別科を含む) □海外の高等教育機関
4.サポート学生はどのように募集していますか。(自由記述)
5-1.授業を進めるうえでの、サポート学生の必要性についてお答えください。
〇①できれば毎回、授業に入ってほしい 〇②授業によっては入ってほしい
〇③入っても入らなくても、どちらでも構わない 〇④入らない方がいい
5-2. ③「どちらでも構わない」④「入らない方がいい」とお答えの場合→その理由についてお聞かせください。
6. どのような科目でサポートの必要性を感じますか。(複数回答可)
□文法 □口頭表現 □文章表現 □聴解 □読解 □文字語彙
□日本語能力検定試験対策 □日本文化事情 □科目は問わない □その他
7-1.サポート学生にどのようなサポートを期待しますか。(複数回答可)
□ペアワークの相手 □リアルな日本語のリソース □リアルな日本文化のリソース
□一部学生への個別対応 □全体の机間巡視 □グループワークのサポート
□設定した目標へのサポート □その他
7-2. 「その他」を選ばれた場合は、具体的な記述をお願いいたします。
8. サポート学生の必要性を感じるのはどのレベルですか。(複数回答可)
□N1合格以上相当 □N2合格以上相当 □N3合格以上相当 □N4合格以上相当
□N5合格以上相当 □N5合格未満(ゼロ初級) □レベルは問わない
9. 授業にサポート学生が参加する際に心がけている点、留意点などがありましたらお聞かせください。(自由記述)
10. これまでにサポート学生が授業に入ったことでトラブルや混乱が生じたことがあればお聞かせください。(自由記述)
11. 教育機関によってサポート学生の活用の仕方に違いがあれば、簡単にご説明ください。(自由記述)
12. オンライン日本語授業にサポート学生が入ったご経験がありましたら、対面との違いなどについてお聞かせください。(自由記述)
13. その他、サポート学生の活用方法に関するご意見、また本調査に対するご意見、コメントなどがありましたらお聞かせください。(自由記述)
教育機関によっては、「クラスゲスト」、「学生サポーター」、「バディ」などと呼ばれることもある。
2CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参考に、日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容・方法を明らかにし、外国人等が適切な日本語教育を継続的に受けられるようにするため、日本語教育に関わる全ての者が参照できる日本語学習、教授、評価のための枠組み。
3先行研究として本文中に記載したが、この論文は本調査の実施より後に出されている。