異文化コミュニケーション
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招聘論文
研究論文
  • ジャスティン シャルボワ
    2025 年28 巻 p. 5-26
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/12/28
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    トウキョウ・バイスは、日本に駐在するアメリカ人犯罪記者の回想録を基にしたテレビシリーズである。 ジェイク・アデルスタインは明知新聞で働く最初の外国人であり、このシリーズは彼の東京での仕事と私生活の両方を描いている。ジェイクは日本での生活に慣れながら、その困難を乗り越えていく。本稿では、このシリーズで流布している言説を分析し、文化への適応過程と異文化間コミュニケーションに関連するその意義に焦点を当てる。このシリーズを分析するために、談話理論とベリーの馴化理論が利用された。これらのシリーズで流通している言説には、異質性、個人主義、平等主義、先輩/後輩、統合/同化などがある。ジェイク・アデルシュタインは、これらの言説を利用して、統合主義者のアイデンティティを構築した。アメリカ的アイデンティティから日本的アイデンティティへ移行する過程は、必ずしも直線的なものではなかった。時には、ジェイクがニュース記事をひたすら追い求めた結果、個人主義や平等主義といったアメリカ的な言説が引き出されることもあった。またある時は、ジェイクは代替的な先輩・後輩の言説を利用し、統合主義的なアイデンティティを構築した。ジェイクとこれらの言説との相互作用は、アイデンティティ形成が社会的相互作用の中で起こる再帰的プロセスであることを反映している。映画やテレビシリーズの研究は、異文化間コミュニケーションにとって重要な意味を持っている。トウキョウ・バイスはは1990年代を舞台にしているが、2020年代に世界中の観客に向けて制作された。したがって、このシリーズは、日本がどのように世界的な視聴者に表現されているかを反映している。ジェイクの日本への適応は、連続的なプロセスとして表現された。他者との交流や日本文化への適応を通して、ジェイクは文化的疎外や分離から統合へと向かう。

調査・実践報告
  • 教師への小規模アンケートからの一考察
    荻原 まき, 鈴木 美穂, 高橋 恵利子
    2025 年28 巻 p. 27-40
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/12/28
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    大学における留学生への日本語授業は、教師が複数の留学生を指導する形態が一般的である。しかし、授業によっては、教師とともにサポート学生が授業に参加し、留学生の学習支援を行うことがある。サポート学生は、単独または複数名で授業に参加し、留学生の学習を助ける様々な活動を行う。支援の内容は各教育機関や授業によって異なり、授業担当教師の裁量に委ねられることが多いが、サポート学生の活用に関する情報は広く共有されていない。本調査では、サポート学生活用の実態に関する基本情報の収集を目的とし、日本語教師を対象に小規模なアンケート調査を実施した。その結果、約90%の教師がサポート学生を授業で活用した経験があることがわかった。また、教師はサポート学生に「会話の練習相手」、「同世代のリアルな日本文化・日本語のリソース」など〈学習を支援する学生〉としての役割だけでなく、留学生と対等の立場で授業に参加する〈共に学修する学生〉としても期待していることがわかった。

    一方で、サポート学生の無断欠席や授業内での役割の認識のずれなど、授業運営上のトラブルに関する情報も得られた。サポート学生を交えた授業の円滑な運営には、事前準備やサポート学生との情報共有が重要であるとともに、サポート学生の役割や活動内容を明確化することがトラブル回避につながるという知見が示された。

    サポート学生の活用は、留学生だけでなくサポート学生にも学びの機会を提供しうる教育活動であるが、教師の負担が増大することや、サポート学生の活用を不要と感じる教師や留学生が一定数存在することにも留意する必要がある。

研究ノート
  • 在日中国人への質問紙調査を通して
    張 氷穎
    2025 年28 巻 p. 41-54
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/12/28
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    本研究は、対人関係に係る異文化適応1に影響する要因を明らかにすることを目的に、162人の在日中国人を対象に質問紙調査を行った。対人関係の適応と関連する質問項目を因子分析にかけたところ、プライベートな人間関係、対日本人感情、パブリックな人間関係という3つの因子が抽出された。次に、パス解析によって各因子にどのような要因が関与しているかを考察した結果、日本語力、ソーシャル・サポートがプライベートな人間関係の適応に正の影響、滞日期間がパブリックな人間関係の適応に正の影響を与えていることが分かった。また、差別経験が対日本人感情とパブリックな人間関係の適応に負の影響を与えていることと、ソーシャル・スキルの下位尺度である外向型スキルがすべての因子に正の影響があることも明らかになった。

  • 自殺、日本のアイデンティティ、アフリカ系アメリカ人コミュニティの洞察
    ホゼア ベーカー
    2025 年28 巻 p. 55-70
    発行日: 2025/06/30
    公開日: 2025/12/28
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    本研究は、アフリカ系アメリカ人コミュニティにおいて中心的な役割を果たしてきたラディカルホープの三要素─深い共同体・家族の絆、文化的アイデンティティ、信仰・精神性─を、日本の概念である生き甲斐、和、我慢、家族と統合することで、日本における自殺問題に対処するための強固な枠組みを構築できる可能性について探究するものである。構成主義的グラウンデッド・セオリーの手法を用い、日本人男子大学生への初期インタビュー調査を行った結果、彼らがラディカルホープの概念に強い関心を示す一方で、これらの要素が自身の生活に欠如していると感じていることが明らかとなった。アフリカ系アメリカ人コミュニティの洞察、日本における自殺に関する研究、そして限られたインタビュー結果に基づき、ラディカルホープの導入が人生の困難を乗り越えるためのより深い内省を促す可能性が示唆された。本研究の視座は、アフリカ系アメリカ人のレジリエンス戦略を活用し、日本の異文化的アイデンティティを強化することによって、文化的感受性を備えた自殺予防プログラムの創出に向けた今後の日本人研究者への指針となることを目指している。

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