日本シルク学会誌
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原著
繭保存方法に関わる古典技法とその糸品質について
関根 理恵
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2006 年 15 巻 p. 23-30

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抄録
生繭は長期保存することができない。よって繭の保存方法は非常に重要な問題である。この繭保存方法について12世紀に書かれた史料に基づき古典技法の実験を行いその効果を検証する必要がある。よって古典技法により得た繭の繰糸試験を実施し、できた生糸の物性を測定・観察した。その結果、繭保存の古典技法に保存効果が確実にあることが実証された。中でも、塩蔵、土室蒸し、熱による乾燥、水蒸気処理に効果的があった。各技法の特徴としては、天日干しによる乾燥繭は、長期保存に適さないことがわかった。また塩蔵では、繭保存に有効な技法であったが、塩蔵の場合は完全に密封できなければ殺蛹ができず、塩量が少ないと低い湿度を保てないため、繭層の含有水分によりカビが生じることがわかった。糸品質では、塩蔵の生糸が天日干し乾燥の生糸より強度・伸度・ヤング率とも高かった。また塩の量により保存効果と生糸品質に差がでた。水蒸気処理の繭は、時間経過とともに黄変し糸の強度は高いが硬直な触感で光沢が悪くなった。
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© 2006 日本シルク学会
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