日本シルク学会誌
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最新号
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学術論文
  • 岩瀬 勝則, Tian Yaxi, 糠塚 明, 亀田 恒徳
    2025 年33 巻 p. 5-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    シルクは耐熱性や機械的物性が優れた天然素材であり,もっぱら衣服に使われてきた.シルクのポリプロピレン(PP)への添加では,射出成型機への直接投入によるシルク“ダマ”の形成が懸念されていた.溶融した樹脂と添加物との複合化では,水等の添加によって樹脂内での添加物の分散性が向上することが知られている.一方で,シルクを170℃以上に晒すことで脱水分解による過熱水蒸気の発生が近年報告されていた. 本稿では,複合材の熱的および機械的な性能向上を得るために,シルクから発生する過熱水蒸気を積極利用した“ダマ”の生成抑制に取組んだ.結果,PP内でのシルクの良好な分散が実現でき,狙いとする性能向上を達成した.その成功の鍵は,樹脂への混練温度を210℃にしたことであった.すなわち,シルクは,この高温に達するまで水を保持する能力があり,一種の「水の貯蔵庫」として機能するという,新たな特性を見出すことができた.
  • 栗岡 聡, 池嶋 智美
    2025 年33 巻 p. 17-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    繭糸分離細繊維の発生が顕著な系統(F7)にみられる不整形なフィブロインの繊維側面を観察するために,臭化リチウムによるフィブロインの膨潤処理を行った.その結果,側面に発生した線状の溝を光学顕微鏡下で観察することが可能となり,これらはフィブロイン表面の陥入によって生じる異常構造であることが繭糸の断面SEM画像からも判った.線状溝は繭層外層から中層に分布していたが,内層では認められなかった.外層には,陥入の初期段階と思われる僅かな窪みが確認された.一方,繭糸分離細繊維を発生しない系統(CV)では線状溝は認められなかった.以上の結果から,陥入構造はF7に特異的であり,繭糸分離細繊維の発生にはフィブロイン表面の陥入が深く関与している可能性が示唆された.また,陥入により著しく分裂したフィブロインも確認され,繭糸分離細繊維を発生する系統のフィブロインには構造的な欠陥が潜在している可能性が示された.
  • 飯塚 哲也, 伊賀 正年, 平山 力, 岡田 英二
    2025 年33 巻 p. 27-35
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
     遺伝子組換え技術により機能性タンパク質をフィブロイン融合タンパク質として絹糸腺で発現させることで,高機能シルクを作製できる.高機能シルクの一つである蛍光シルクは,フィブロインに結合するよう各種蛍光タンパク質を発現させている.現在では,緑色蛍光タンパク質含有絹糸生産カイコなど複数の蛍光シルク品種が,産業上利用可能である.本研究では,蛍光シルクの混色効果を調べるため,紫外光で青色蛍光を発する青色蛍光シルク系統と橙色,緑色,赤色蛍光シルク系統との交雑試験を行い蛍光色の変化等について調査した.青色蛍光シルク系統と緑色蛍光シルク系統の交雑種で,通常は励起されない紫外光で緑色蛍光が観察できた.一方で青色蛍光シルク系統と橙色蛍光シルク系統の交雑種は,相乗効果は見られなかった.多くの蛍光シルク系統が開発されてきたが,蛍光タンパク質遺伝子を複数持つスタック品種とすることで,可能性が広がることが期待される.
  • Rikako Hama, Katsura Kojima, Hidetoshi Teramoto, Tsunenori Kameda
    2025 年33 巻 p. 37-48
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    Hornet silk (HS) collected from hornet nests can be processed easily into a regenerated film through dissolution into a concentrated salt solution, followed by desalting and drying. In fact, HS requires no pre-dissolution refining. Moreover, dissolution processes can be performed at room temperature. Although the risk of protein degradation caused by heating during processing is low, the actual degradation effects remain unclear. Results of detailed SDS-PAGE analyses of cocoons and regenerated films conducted for this study confirmed that part of Vxsilk4 (x = s, a), a major protein constituting HS, was degraded in regenerated films prepared from cocoons of Vespa simillima and Vespa analis. The addition of PMSF, a specific inhibitor of serine proteases, inhibited this degradation, suggesting that enzymes present in the nest or cocoon acted during film fabrication. By contrast, no similar protein degradation was observed in a film prepared from a Vespa mandarina cocoon.
解説
  • -欧州絹産業連携プロジェクト「ARACNE」を事例に-
    小澤 茉莉
    2025 年33 巻 p. 49-54
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    近年国内絹産業は従事者の高齢化や後継者不足等によって衰退の一途をたどっているが,こうした状況を打開するためには,絹産業における組織が連携し,今日の課題を実証的に検討する産官学コンソーシアムの構築が必要である.欧州における絹産業関連組織の連携プロジェクト「Advocating the Role of silk Art and Cultural heritage at National and European scale(ARACNE)」は,欧州連合による研究とイノベーションに向けたプログラム「Horizon Europe」から資金提供を受け,2023年にイタリアを拠点とする「Council for Agricultural Research and Economics (CREA)」を中心に設立された.ARACNEは,絹に関わる製造業や研究・教育機関と連携し,欧州絹産業における文化遺産の情報収集や教育活動を通して,絹産業の復活に向けたエコシステムを構築している.本稿ではARACNEの活動内容や設立背景を整理し,日本の絹産業における産官学コンソーシアムの可能性を検討する.
  • -江戸時代と現代の蚕糸業についての比較- その1
    横山 岳, 齊藤 有里加, 高橋 美貴
    2025 年33 巻 p. 55-66
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
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