日本シルク学会誌
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第55回日本シルク学会研究発表要旨集録
米沢織物産地の展開と機業対応
加賀美 思帆小野 直達
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2007 年 16 巻 p. 158-159

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抄録
本報告は、米沢織物産地における機業への聞き取り調査(平成19年10月24∼25日実施)をとりまとめたものである。聞き取り調査では、先行研究の氾作冰ら(2005)「米沢織物産地の現状と課題」を受け、その後の米沢織物産地の展開、及び、機業における生産・流通対応を明らかにすることを目的とし、機業経営者に対する面談方式による回答を得た。対象は、米沢織物工業組合、と呉服を中心とする及び広幅を中心とする機業の2社にヒアリングを行った。今回の聞き取りでは、米沢織物産地の特色である先染織物における多品目少量生産の展開に着目して、その展開条件として各機業における市場開拓への取組みを聞き取った。聞き取りの結果として、機業における市場開拓への取組みの実態から、1つは、国内市場に関しては、流通関連企業の縮小を受け、機業自らが売ることにより、小売業者及び消費者のニーズを取り込むことが可能となり、機業自体の商品開発力を高めていること、2つは、海外市場に関しては、社会経済システムの違いにより安定的な受注が確保可能であり、そのことが機業自体の生産性を高めている傾向があること、が推察された。なお、米沢織物産地は不況には他産地に比較して強い産地とみられるが、現下の厳しい条件下にさらされている絹織物産地の今後の生き残り方を示唆するものであり、特に機業におけるマーケットイン、即ち、自ら作り売る、という新しい生産体制への取組みを指摘することが出来る。
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© 2007 日本シルク学会
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