セリシンのみからなるセリシンホープの繭層から調製されるセリシンゲルフィルム(セリシンGF)は,含水性とハンドリング性に優れ低細胞接着性を示すことから,創傷被覆材としての応用可能性を有している.本研究では,創傷被覆材としてのセリシンGFの特性をさらに明らかにするため,その薬剤放出特性と水蒸気透過性を解析した.その結果,低分子および中分子サイズのモデル薬剤を担持させた場合ではセリシンGFからの速やかな溶出が見られ,セリシンGFが薬剤放出担体として機能することが分かった.また,乾燥状態でのセリシンGFの水蒸気透過性はろ紙よりも小さく,市販の医療用フィルム材料よりも大きかった.一方湿潤状態では,セリシンGFは水分透過を全く抑制しなかった.この結果から,セリシンGFによって創傷部位の水分量を調節できる可能性が示唆された.本研究により創傷被覆材としてのセリシンGFの特性をより明確にできた.