2024 年 32 巻 p. 21-28
シルクの熱分解初期における熱分解の開始とその後の連鎖反応に関する機構をTGとTPD-MSとの併用によって解明した.フィブロインに対するセリシンの割合が異なる3種類の未精練家蚕シルクは,いずれも170℃から熱分解による重量減少が始まり,同時にH2Oが発生した.170 ℃を超えてからの重量減少率,水の発生量,発生速度の変化は試料ごとに異なった.また,CO2とNH3の発生速度変化も試料ごとに異なった.以上の結果から170℃からの熱分解機構を以下のように解釈した.熱分解はセリシンに多く含まれているSerやAspの側鎖脱水反応から開始され,そこで発生したH2Oによる主鎖アミド結合の加水分解へと連鎖する.SerとAspが多いほどH2Oの発生速度は向上し、それが主鎖加水分解を加速化させる.TGの170 ℃からの重量減少の勾配度合いはこの分解速度の大きさを反映している.