営繭から約10年保管したクモ糸シルク繭から繭糸を調製し,力学物性を測定したところ,力学物性の低下が認められ,特に破断伸びの低下が著しかった.また,この繭糸に浸水・乾燥処理を行った後に力学物性を測定したところ,クモ糸シルク繭糸の水分量が高いほど破断強度及び破断伸度が低下する結果が得られ,特に浸水時には破断伸度が大きく減少した.また,エタノール浸漬した後の繭糸の力学物性解析では,得られた応力-ひずみ曲線においてクモ糸シルクと非組換えシルクでは,塑性変形領域の傾きが異なる結果が得られた.以上の結果は,いずれもクモ糸シルク中に含まれるクモ糸タンパク質がシルクの非晶領域に存在することが原因と考えることができた.本成果はこれまで困難だったクモ糸シルクにおけるクモ糸タンパク質の分布状態を示唆するもので,今後のクモ糸シルク開発の指標となる結果となった.