日本シルク学会誌
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シルクと古漢字
鄭 瑾重松 正矩
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1997 年 6 巻 p. 49-54

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抄録

 シルクは中国が世界で初めて作り出した繊維である。中国の神話伝説では、創世紀の伏義、黄帝は繭の糸と桑の皮から弦と絹布を作ったことを伝えている。大量の考古資料及び出土した文物により、五、六千年前の新石器時代に中国の先民たちは野蚕を馴化して家で飼い、さらに蚕の糸で織物を作っていたことがわかった。三千年前殷商時代に至ると、人類最初の漢字と言われ甲骨文中では既に桑、蚕、糸、帛などの文字があり、さらに蚕神を祭るなどの行事が刻まれた遺物も発見されている。シルクの生産及び発展と共に関係する古漢字の形成は深く関わりがある。文字によりその時代の社会政治、科学技術、人々の生活方式に反応し、シルク技術やその文化を伝えるために必要な新しい文字が創造され、次第に伝播して行った。その創造後普及した文字 (情報) を誘導子として、シルク文化と技術は距離を超え、時代を超えて広く伝播され、その文化と技術の “化石” の役となる。長い歴史中、シルクは独特な文化―シルク文明となり、また、伝統文化の一つ重要な内容として、文化、科学、技術及び人々の社会生活方式に巨大な影響を与えた。

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© 1997 日本シルク学会
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