日本シルク学会誌
Online ISSN : 1881-1698
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ISSN-L : 1880-8204
6 巻
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
原著
  • 神津 剛夫
    1997 年 6 巻 p. 1-7
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     検査繊度21デニール及び27デニールの生糸各50荷口、計100荷口を選び、各荷口共50ボビンについて、100回繊度糸8本を連続して採取した。全分散に占めるかせ間分散の割合の平均は、21、27デニールとも、100回繊度糸では約32%、200回繊度糸では約41%、400回繊度糸では約52%となった。かせ間分散 > かせ内分散となった荷口は100回繊度糸ではわずかであったが、400回繊度糸では半数以上に見られた。
     分散成分相互の相関係数の値から、かせ間分散とかせ内分散及びかせ間分散とかせ間分散の割合の間には正の相関が認められた。かせ間分散の割合と全分散との相関係数の値からは、一定の関係は認められなかった。連続性について調べた結果、時間の遅れ1に対する自己相関係数の値からみて、100回繊度糸においては連続性が無視できない荷口が認められた。
  • 白 倫, 謝 佳, 李 林甫, 周 韶, 王 健民
    1997 年 6 巻 p. 8-15
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     有限な長さを持ち, 太さが外中層より内層にかけて傾向的に減少しながら複雑な変化を示す非定常系列の繭糸繊度曲線に対して階段式自己回帰モデルを構築し自己回帰係数の最小2乗法による線形方程式と最小残差分散を示した。繭糸繊度曲線のコンピュータによる生成方法を提案し, 同方法により荷口の特徴によく似合う繭糸織度が生成できることをシミュレーション実験で確認した。
  • 森川 英明, 三浦 幹彦, 岩佐 昌征
    1997 年 6 巻 p. 16-21
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     繭糸繊度特性の異なる6種類の原料繭を用いて、定繊繰糸シミュレーション実験を行い、繰製後の生糸繊度分布の比較を行った。その結果、繰糸工程の細限接緒点繊度を同一に設定して繰糸を行った場合でも、原料繭の繭糸繊度特性によって分布形状に大きな変化が見られた。特に凸型の繭糸繊度曲線を持った原料繭の場合、目的繊度を外れて大きな繊度値をとる割合が高くなり、繊度偏差を大きくすることが知られた。
  • 森川 英明, 三浦 幹彦, 岩佐 昌征
    1997 年 6 巻 p. 22-28
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     繭糸繊度特性の異なる6種類の原料繭を用いて、定繊繰糸シミュレーション実験を行い、繰製後の生糸繊度時系列データの解析を行った。生糸繊度変動の周期性および原料繭特性との関連について検討した結果、細繊度繭糸で繰糸した場合は短い周期での変動を生じた。また太繊度繭糸では、接緒時の繊度上昇が大きく、さらに繭糸繊度曲線の形状によっては接緒後にも繊度上昇を生じることから、目的繊度よりも高い生糸繊度値で推移し、その結果、接緒の間隔が大きくなることが知られた。また同一原料繭でも、目的繊度を大きくするほど繊度変動が短周期で現れる傾向が見られた。
  • 赤羽 恒子, 坪内 紘三, 新保 博
    1997 年 6 巻 p. 29-35
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     5齢期における人工飼料水分率と繭の乾燥初期温度が「はばたき」の繭色、生糸の色に与える影響及び繭層セリシン溶解性や繰糸成績等に及ぼす影響について検討した。その結果、5齢期の人工飼料水分率が低く、乾燥初期温度は高くなるほど「はばたき」の繭色を黄変させ、特に飼料水分率55%、乾燥温度115℃以上では黄変度が急激に増した。乾繭後の繭を白繭と黄変繭に分けた、そのセリシン溶解度は、白繭の場合、1~4齢人工飼料育、5齢桑葉育繭の「はばたき」に比べ高いが、黄変した繭は低下する。
     繰糸成績を総合すると、飼料水分率65%及び70%繭区の成績が比較的良好となった。
     黄変した繭から得られた生糸は強・伸度を低下させ、黄変度の小さい白繭による生糸の場合も強度は、1~4齢人工飼料育・5齢桑葉育繭に比べ若干低下するが、飼料水分率65%~75%内では伸度への影響は小さい。
  • 青木 昭, 栗岡 富士江
    1997 年 6 巻 p. 36-42
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     限性品種「黄白」繭の生糸がもつ色彩を利用した色柄の作出を目的として先練織物を試作した。経糸には黄繭糸 (生) と黄繭糸 (練) とを経縞柄に配列して天然の色を強調し、緯糸には黄・白それぞれの練糸を織り込み、練絹の柔らかさを与えて、良好な風合いの生地を得た。
     黄繭糸は酵素精練により出来るだけ黄味が残るように練減を加減した。織糸に使った黄繭糸は生・練糸ともにエポキシ加工を施し、セリシンの溶解性を抑えて黄色の堅ろう性を高める工夫がしてある。
     洗濯試験では収縮率3%以内、変退色4級、風合いに著しい変化もなく、経糸に配列した黄繭糸 (生) の湿熱によるセット効果により、スチームアイロン仕上げで保形性が向上した。なお、黄繭糸の色を残すことによるセリシン残膠量が、織物の吸湿性を高める効果を示した。
  • 黄 國雄, 上石 洋一
    1997 年 6 巻 p. 43-48
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     ポリロフトスーパーハイブリッドシルク布を組織を変えて製織した。防しわ性はポリエステルとの混繰のために羽二重よりも優れていた。力学特性値から風合い値を婦人外衣薄地用変換式を用いて求めると, こしやはりがあり, かつしなやかさやしゃり感も良好な布であることが分かった。接触冷温感qmaxも小さく, 触った際 “冷” と感じない素材である。また, 定常熱伝導率が大きく, 衣服内の熱を外気に伝えやすい性質もある。
資料
  • 鄭 瑾, 重松 正矩
    1997 年 6 巻 p. 49-54
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     シルクは中国が世界で初めて作り出した繊維である。中国の神話伝説では、創世紀の伏義、黄帝は繭の糸と桑の皮から弦と絹布を作ったことを伝えている。大量の考古資料及び出土した文物により、五、六千年前の新石器時代に中国の先民たちは野蚕を馴化して家で飼い、さらに蚕の糸で織物を作っていたことがわかった。三千年前殷商時代に至ると、人類最初の漢字と言われ甲骨文中では既に桑、蚕、糸、帛などの文字があり、さらに蚕神を祭るなどの行事が刻まれた遺物も発見されている。シルクの生産及び発展と共に関係する古漢字の形成は深く関わりがある。文字によりその時代の社会政治、科学技術、人々の生活方式に反応し、シルク技術やその文化を伝えるために必要な新しい文字が創造され、次第に伝播して行った。その創造後普及した文字 (情報) を誘導子として、シルク文化と技術は距離を超え、時代を超えて広く伝播され、その文化と技術の “化石” の役となる。長い歴史中、シルクは独特な文化―シルク文明となり、また、伝統文化の一つ重要な内容として、文化、科学、技術及び人々の社会生活方式に巨大な影響を与えた。
平成9年度製糸絹研究会賞受賞記念講演要旨
第45回製糸絹研究発表要旨
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