総合危機管理
Online ISSN : 2432-8731
最近の在留資格審査と国益に関する考察
中村 伊知郎
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2019 年 3 巻 p. 45-49

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抄録
国際化、留学生30 万人計画、労働力不足などの言葉により、政府は従来の在留資格許可基準、すなわちその運用実務である基準省令と在留資格審査要領を大幅に緩和してきた。その結果、日本に住む外国人は急増した。大学は無試験で入学した基礎学力のない留学生で溢れ、本来なら単純労働である販売職労働者が、「通訳」の名目で月給18 万円以下で就労資格を得て働いている。しかし、学生を集めたいという大学や、安い労働力がほしいという経営者らの要求を満たすには、十分な納税すらせず、社会保険にもフリーライドする外国人の払うべきコストを他の日本人納税者が負担しなければならないことを意味する。また、審査基準を下げることで、日本語や日本文化に対する理解が不十分な外国人も増えたが、日本社会と共存し難い外国人は、日本の法令や常識が通じないコミュニティーを形成し、日本社会の方が彼らに合わせることを要求することもある。また、現実問題として、外国人犯罪は増加している。本稿では、入国管理局に対する外国人の在留資格申請を専門にしている行政書士の経験を基に、在留資格審査要領と、実際に問題となっている事例を概観し、外国人に対する在留資格許可基準の緩和が、将来の日本社会にとって相当な危機となりうることを提示し、その対策となる政策の方向を提案した。
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© 2019 総合危機管理学会
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