2020 年 20 巻 1 号 p. 41-50
現在人為活動に伴う大気二酸化炭素濃度の増加に伴って海では、温暖化による海水温の上昇と共に、海水のpHが低下する海洋酸性化が急速に進行している。海水のpHが低下すると、海水中の炭酸カルシウム飽和度が低下することから、特にサンゴ礁生態系は酸性化の影響を強く受けることが懸念されている。本総論では、海洋酸性化がサンゴ礁域の生物ならびに生態系に及ぼす影響について要点をまとめ、今後の研究の方向性について論じる。特に研究の発展と共に明らかにされてきたサンゴの石灰化機構への影響、さらにはサンゴ種間や種内での応答の違いについて紹介する。またサンゴに加えて、ウニ類や藻類などへの影響と共に、生物間相互作用に対する影響を述べ、酸性化によるサンゴ礁生態系への影響と今後の課題について論じる。