日本女性科学者の会学術誌
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総説
糖尿病の医療と医療経済―医療制度による医療費決定の仕組みと日本の糖尿病医療の課題―
稲田 扇稲田 明理
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2020 年 20 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

日本と米国の糖尿病を専門に扱っている一医療機関を対象に糖尿病にかかる医療費を調査し、1人あたりの年間外来医療費及び1回あたりの外来医療費を算出した。医療制度の違いにより医療費決定の仕組みが異なるため、それらが病院経営にどのように影響しているのかを考察し、その上で、日本における糖尿病医療の課題を提唱する。今回調査対象である医療機関のよこがわクリニックとジョスリン糖尿病センターの1人に対する1回あたりの自己管理教育・診療時間・労力を比較すると、ジョスリン糖尿病センターでは非常に長く多いことが特徴であるが、予想に反して医療費は高くなり過ぎていなかった。一方で、回収額が請求額を大きく下回り病院収入が不安定という問題があった。日本では、診療報酬制度を適用していることから病院の回収額は請求額とほぼ同じで安定していた。日本の課題は、患者に高度な教育を与える時間を増やすことや医師・スタッフ・経営陣の役割分担を明確化させ専門家として活躍できる環境整備を一層進めることである。

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