植物細胞は分化全能性を有しており、その細胞増殖・分化の柔軟性が植物に特徴的で可塑的な形態形成と高い器官再生能力の原動力となっている。一方で、植物は分化全能性をプログラム細胞死によって完全に捨て去る高度機能化細胞を生み出し、発生プログラムに巧みに組み込むことで進化してきた。本稿では、このような植物細胞の柔軟な細胞増殖・分化制御と運命決定の分子機構について、おもにRNA 代謝やタンパク質修飾などの転写後遺伝子調節の観点から最新の知見を概説し、転写後遺伝子調節がなぜ植物細胞の細胞増殖・分化制御に重要なのか、その意義について考察する。