核酸の構造はワトソン・クリック塩基対から成る二重らせん構造である。しかし近年では核酸は、三重らせん、四重らせん構造などの非二重らせん構造も形成できることが明らかになりつつある。興味深いことに、非二重らせん構造を形成できる核酸の塩基配列はがんや神経変性疾患に関連する遺伝子上に多く存在し、非二重らせん構造が形成されると転写・翻訳など遺伝子発現の変異が誘起されることが報告されている。そのため、非二重らせん構造が疾患の発症や進行に及ぼす役割が注目され、非二重らせん構造の形成と疾患遺伝子発現変化の相関を明らかにする研究が世界的に行われている。これらの知見は、疾患の発症や進行の分子機構の解明に役立つ可能性がある。本総説では、疾患関連遺伝子(特にがん遺伝子)上に形成される非二重らせん構造と、核酸構造が遺伝子発現に及ぼす影響について概説する。