陸上植物は、乾燥した大気から身を守りつつ、太陽エネルギーを利用し炭酸同化(光合成)を行いバイオマスを生産している。酸素や二酸化炭素などのガス交換と水蒸気の蒸散は、植物表皮に存在するミクロサイズの通気口である気孔を介して行なわれる。気孔は植物と大気環境とのいわば接点といえるだろう。モデル植物シロイヌナズナを用いた筆者の研究室および他グループによる最近の成果から、気孔の数と分布を制御する細胞間シグナル伝達機構の実体が明らかとなってきた。本総説では、細胞間のコミュニケーションが気孔の発生における細胞運命の決定をどう左右しているのか概説する。